2013年に発売された文春文庫の「東西ミステリーベスト100」という本を買っ

て、読んでいる。
国内編のミステリーの順位が、1位が獄門島(横溝正史)、2位が虚無への供物
(中井英夫)、3位が占星術殺人事件(島田荘司)となっていて、飛んで9位に
魍魎の匣(京極夏彦)が入り、10位にまた横溝正史の著作の「本陣殺人事件」
が入っている。ベスト10位に2作品も入っている横溝正史の人気はすごい。

 

ところで、9位の「魍魎の匣(もうりょうのはこ)」について、ミステリ評論家の

千街晶之(せんがい あきゆき)氏が冒頭の座談会でこのように発言している。

『読んだ時のインパクトで言うと、個人的な体験として「魍魎」の衝撃はいまだ
に忘れられません。これを読んで半年間くらいは、何を読んでも面白いと思えな
いほどでした。』

 

これは、「魍魎の匣」を読みたいと思わせる力を持っているコメントだ。つまり、
その作品に関してどれだけ自分が影響を受けたか、のめりこんだか、それが、

大きければ大きいほど、その人が語る言葉は他の人にも影響を与えていく。

 

ということを考えたときにやはり、ぼくは映画作品にほれ込んだ時に書いていき
たいし、映画作品にどっぷりつかって映画大好きな人の文章を読んでいきたい。
つまらなかった作品にボロクソ書いている言葉も、逆にどれだけひどい作品なの
か観たいという気持にさせるが、そればっかりではつまらない。

 

ということで、自分が大好きになった作品に関して書きたいので、久々に「今まで
見た作品のなかでのベスト100」をまた復活させたいと思った。

 

37. キム・ギドク 「悪い男」(2001年)

 


「悪い男」という映画は、街で見かけた女子大生ソナに一目惚れし、強烈なディー
プキスを無理やりするところから、物語が始まる。この映画の主人公は、言葉と
して定着した「植物系男子」とは正反対の完全なる肉食系のヤクザ。その目のぎら
つきから、ただものではない雰囲気と緊張感を映画から感じた。

 

男は女を売春宿に売り、それで生計をたてている。でも、周りを気にしながら、
変な奴と思われないように、せせこましく生きるのとは違って、この主人公は男
としての自分の欲望に忠実に生きている。そこに善、悪を超えた生命としての潔さ
を感じた。

 

この作品と並ぶ同じキム・ギドク監督の「悪い女」も面白かった。この2つの作品の

強烈さに、ぼくはキム・ギドク監督のファンとなった。

 

38.ジェームズ・マンゴールド「17歳のカルテ」(2000年)

 


アンジェリーナジョリーはいろんな映画に出たけれど、ぼくは彼女が24歳の時に
出演した「17歳のカルテ」という作品が大好きだ。

実話をもとにした映画。
自殺未遂をおこした17歳のスザンナ・ケイセンは、精神病院に入れられることに
なる。そこで風変わりな女性たちと知り合う。スザンナは精神病という自覚が無
く、病院の環境に馴染めなかったが、そこのボス的存在であるリサ(アンジェリー
ナ・ジョリー)の、精神疾患である事を誇るかのような態度に魅かれていく。

やがて、スザンナは精神科病院が自分の居場所と感じるようになっていく。

 

しかし退院した患者の近親姦を暴露してその患者を自殺に追い込むというリサの
行動から、徐々に彼女に疑問を持つようになって行く。その事でリサに疎んじら
れ、他の患者も全員リサに同調して彼女は孤立する・・・・・・

 

舞台は精神病院なので、出演者は個性が際立ち、おのおのがバラバラ。その中

で、アンジェリーナジョリーの役者としての色気を含んだ輝きは半端ではなかった。

 

「悪い男」の孤独なヤクザ・ハンギ、そして「17歳のカルテ」のリサ、ともに自分
に正直に生きて、世間の枠からはずれてしまっているキャラだ。
そこに面白さや魅力を感じるのは、ぼくが日々、自分をごまかして周りに合わせて
生きているから、その発想や行動の自由さに憧憬を感じるからだという事にきが
つく。


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