丸尾末広というと、『エロ・グロがメインで耽美的な絵の変態男を描くのがう
まい漫画家』というイメージがあった。漫画家というより、ぼくの感覚では
イラストレーターの感が強い。
ストーリーは、日常から離れすぎていて、前衛っぽくなってしまい一般受けの
する面白さとは距離があるとぼくには思えた。
そんな丸尾末広の漫画の単行本を見つけた。やはり、漫画というよりは絵が
芸術的で画集のようにも見えてしまう。驚いたのは本の帯に、「第13回手塚
治虫文化賞新生賞受賞!!」とあった事だ。どうして、あの変態的な美と、
わかりにくいストリーの漫画が『手塚治虫文化賞』なんていう賞を取ってし
まったのか?
原作が江戸川乱歩ということで、丸尾末広の上手い絵と猟奇的だが大衆的な
面白さを持つ乱歩のストリーが合体して、いい意味で予想を裏切るできとなっ
ているのか?原作が乱歩で脚色作画が丸尾末広の本「パノラマ島綺譚」、ぼく
に向かって本が「早く買って読んでくれ~」と訴えているように思え、その本を
買った。以下、内容の概略。
売れない物書きの人見広介は、極貧生活の中で、自身の理想郷を夢想し、それ
を実現することを夢見ていた。そんなある日、彼は自分と瓜二つの容姿の大富
豪・菰田(こもだ)が病死した事を知り合いの新聞記者から聞く。大学時代、
人見と菰田は同じ大学に通っており、友人たちから双生児の兄弟と揶揄されて
いた。ある壮大な計画が芽生える。それは、蘇生した菰田を装って菰田家に入り
込み、その莫大な財産を使って彼の理想通りの地上の楽園を創造することであっ
た。
その漫画「パノラマ島綺譚」は、絵のずば抜けた上手さと江戸川乱歩の世界が
うまくからみあって、面白かった。江戸川乱歩の小説と、丸尾末広の絵の世界観
に共通点が多いのかもしれない。
江戸川乱歩の本に夢中になっていた時期があった。明智小五郎や、小林少年
探偵団の出る子供向けの推理小説から始まり、少しエロが入った大人向けの
乱歩の推理小説にはまった。特に、「芋虫」という短編小説には打ちのめされた。
あまりに哀しくあまりにせつなく、そしてグロテスク。小説として本当に完成度が
高く読後も内容を忘れられない。まさにぼくにとってのトラウマ小説といえる。
なお、この「芋虫」も丸尾末広は漫画にしている。
ところが、昔に読んだ江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」の印象が薄い。途中で
つまらなくなって、読み続けることをやめていたかもしれない。丸尾の漫画が
面白かったので、小説の「パノラマ島綺譚」の再読に挑戦した。
小説は、再読してみても結論つまらなかった。主人公の創り出したユートピアの
パノラマ島の外観や内部の装飾に、多くの言葉を使い説明過多で、まどろっこし
くてしょうがない。推理小説としても、中途半端な印象を受け、乱歩の数々の
名作と比較すると、物足りない。
今度は、丸尾末広の漫画の「芋虫」も買って読んでみたい。
2010年公開の寺島しのぶ主演で若松孝二監督の 映画版の「芋虫」、『キャタ
ピラー』は悲惨な結果に終わっているが、漫画の「芋虫」はどこまで原作の持つ
すばらしさに迫っているか、期待したい。
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