◎ 「白い肌の異常な夜」 1971年 アメリカ
監督・制作:ドン・シーゲル
出演者:クリント・イーストウッド、ジェラルディン・ペイジ、エリザベス・ハートマン
「白い肌の異常な夜」、このタイトルが想像力を刺激してくれる。
僕が10代だったときに、テレビの深夜放送でやっていたのを今でも覚えている。「どん
な色っぽい変態的な映画なんだろう?」と、期待に胸をはずませて、テレビの前で始まる
のを待っていた記憶がある。
実は、この映画は題名から想像するほどエロティックな映画ではなく、また出ている女性
群もそんなに綺麗じゃない。お色気映画というより、人間の争いの元となる嫉妬心を
クローズアップして描いている。
舞台は南北戦争がおこっているアメリカ。
一人の傷ついた北軍の兵士を、12歳の少女が発見し本人も住む女性ばかりで自給自足
の暮らしをしている女子学院にかくまう。その兵士は、若きクリント・イーストウッドが演じる
ハンサムな兵士のジョン・マクバニー。
男は戦争に行き、女ばかりで暮らす生活に、突然ハンサムな青年兵士が現れて、彼を巡っ
ての女性同士の取り合いの状態となる。イーストウッドが演じる兵士も、女性の自分に対
する好意を利用して何とか生き延びようと策を練る。
ある夜、一人の積極的な若い女性の誘惑に負け、夜中に屋根裏部屋で裸で抱き合ってい
るところを、彼が「好きだ」と告白した女子学院の教師に見られてしまう。そこから彼の体に
加えられた悲劇と、彼が同居する女性達の真の姿を暴露する戦いが始まる・・・・・。
若くて、ハンサムだと思い観ていたが、もうこのときイーストウッドは、40歳。
映画の中での役は、女に優しくモテモテなのだが、それだけではなくそのモテぶりを利用
して、うまく今だけをきりぬけ抜けようとする計算高い男でもある。
クリント・イーストウッドとしては結構、自分と重なる部分もあって、役に入りやすかったの
ではなかろうか?
最近はイーストウッドが監督した映画で、「ハドソン川の奇跡」が上映している。その映画
の解説で、町山智明が5人の女性と7人の子どもがいる彼の私生活のエピソードを、ラジオ
「たまむすび」で語っていた。彼はロリコンで女好きだという。
有名なのは、ゲイの夫を持つ女優のソンドラ・ロックとの交際。彼女は2度妊娠するが2度と
も中絶。その後、卵管不妊手術を受けたため子どもはできず、89年にクリントが彼女を家か
ら追い出す形で破局した。別れた後、ロックはイーストウッドに対して慰謝料を求める訴訟
を起こした。12年の間、一緒に暮らしイーストウッドの映画にも多く出演したソンドラ・ロッ
クは、彼の暴露本も出している。日本で翻訳本が出ていないのは、残念なことだ。
以下、町山智浩のラジオでの会話を一部抜粋。
(町山智浩)現役最高齢の映画監督ですから。
(赤江珠緒)あ、そうね。クリント・イーストウッドさん。
(町山智浩)大先生。87才とか、なんかとんでもない……
(赤江珠緒)御年87才でいらっしゃいますか。
(町山智浩)すごいですよ。もう本当に。僕が子供の頃はまだセクシー俳優やってまし
たけどね。
(赤江珠緒)そうですね!
(町山智浩)あ、1930年生まれの86才ですね。はい。
(赤江珠緒)もうダンディーと言えば……っていう感じでしたけどね。
(町山智浩)そうですよ。昔は。この人は、ものすごい性豪で有名でしたよね。
(赤江珠緒)えっ? そうでした?(笑)。
(町山智浩)そうなんですよ。伝記を読むと書いてあるんですけど。カーメルっていう
カリフォルニアの土地に彼は住んでいて、市長をやっていたんですけども。
エッチするためのお家とかを持っていたんですね。いろんなファンとかと。
(赤江・山里)ええっ?
(町山智浩)ヤリ家っていうのを持っていましたね。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)そういう人でしたけど。だって、違う奥さんとの間に子供をたくさん作っ
ていて、もうなんだかわからない人ですけど。ついこの間……60才をすぎ
て最後の子供を作っている人ですね。
巨匠イーストウッドのイメージがくずれかねない話しではあるけれど、彼が監督した
映画や主演した映画は本当に面白く感動的な映画が多く、私生活はともかくとして、
芸術家としてすばらしい。
そしてこの「白い肌の異常な夜」も、『女性の心をもてあそんだら、男は最後に
このような目にあってしまいます。』という教訓になるような映画ではあるけれど、
善悪を抜きにして、面白くて画面から目が離せない、そんな映画の一つとなっている。
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