日本で一番悪い奴ら

「日本で一番悪い奴ら」
監督:白石和彌 脚本:池上純哉  2016年
キャスト:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、ピエール瀧、中村獅童

 

「日本で一番悪い奴ら」の映画を観て、これはまた痛快な警察官映画ができたも
のだと、嬉しくなった。

2002年に実際に起こった北海道警察の組織ぐるみの犯罪(稲葉事件)を描いてい
て、主人公はその組織犯罪の犠牲者に仕立て上げられた。つまり、内容は社会派
の告発映画といえる。

しかし、そんなことより刑事でありながら、ほぼヤクザとおなじような言動と
暴力沙汰をひきおこし、その人脈を生かして拳銃を巻き上げ、自己の成果として
申請し、警察組織の中でみとめられていくところが面白い。
これは、警察官の裏の出世物語になっている

主人公の北海道警の刑事・諸星要一はまるで、劇画のように警察官の立場を利用

して、暴力団関係者とつるみ、裏金を懐に入れ酒と水商売の美人ホステスにおぼ

れる。そのホステスとの濡れ場シーンがけっこう色っぽい。

新人・諸星(綾野剛)に警察官としての裏の生き方を教える先輩として、ピエール
瀧も出ている。
彼は、NHKの連続ドラマ「とと姉ちゃん」に出ていて、の仕出し屋「森田屋」の
大将を演じていた。彼が演じるこわもて刑事の役が実にうまくはまっていた。映画
の前半だけで出てこなくなるのが、もったいないほどだった。

クラブでホステス女性を両脇にはべらせ、ホステスの女性の胸を揉みながら、

警察官としての悪の道を説くピエールは、独特の魅力にあふれていた。これくら

い悪役がはまる人もいないのではないか。その演技力にほれぼれした。

ところで、その胸を揉まれる女優・松岡依都美さんに関して、面白いエピソード
があり、ラジオ番組「たまむすび」で、司会の赤江さんと以下のようなやりとりが
あった。

 (ピエール瀧)レクチャーする時に、女の人のおっぱいを揉みながら説明するん
ですけど。揉んでいる人が『凶悪』で僕が抱いていた彼女というか、内縁の妻っぽ

い松岡(依都美)さんっていう女優さんですけども。


 (赤江珠緒) ですってね。そこなんですね。あの方なんですね。

 

(ピエール瀧)そうなんです。だから現場に言って、白石監督が「じゃあ、お願い
 します」っていったら、松岡さんがいて。「えっ、監督。また僕、 松岡さんのおっぱ

いを揉むの?」っつったら、「そうです、瀧さん。揉んじゃってください」っていうか

ら(笑)。

 

(赤江珠緒) (笑)。いや、それ気づかなかった。また全然違う役をされていた
から。

 

(ピエール瀧)なんの天丼なのかな?って思って。「また揉むの?」っつったら、
 「また揉んでください」って。で、松岡さんも「また揉んじゃって ください」って言っ

てるから(笑)。

ところで、ピエール滝演じる先輩警察官が、捕まった後にも、主人公の刑事、諸星

は態度を改めることなく悪事を続ける。さらには水商売の女性だけではなく、シロ

ウトの警察官の女性社員までも手をつけ、社内で一目を盗んで性行為に励む。

やっていることは本当にハチャメチャで、これで何事もなく警察官の仕事がまっと
うできたなら、善悪は別としてこんなに愉快な生き方はないであろう。
しかし、事はそんなにうまくゆかず、警察署の内部に悪事が公になり、北海道の奥
の僻地に飛ばされ、しまいに覚せい剤所持で捕まり、哀しい結末となる。

前回見た、同じように実在の犯罪を扱った「凶悪」も、とても面白い映画だったが、
今回の「日本で一番悪い奴ら」も実に充実した映画だった。白石和彌(しらいし か
ずや)監督に今後も注目したい。


参照:赤江珠緒とピエール瀧 『日本で一番悪い奴ら』を語る
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