中崎タツヤの「じみへん」という漫画が好きで、単行本を何冊か読んでいる。
タイトルの通りにとてもジミなんだけど、読み終えた後にじんわりと染みてく
る面白さがある。
ところで、今回買った中崎タツヤの「もたない男」は、エッセイ集。
作者の物を持たない生活に関して書いている。これもまた、なんとも奇妙な
本で、ぼくは読んでいる途中で、この本を読み続けている自分がなんか
不思議になってきた。
本や映画の面白さは、喜劇や悲劇を含んだ人間の人生ドラマにある。
でも、この本は、捨てることに関しては、いっしょうけんめい書いているのだ
が、人が登場しないので、内容に物語がない。出てくるのは、せいぜい彼の
奥さんが発言した言葉くらい。その何が面白くて本を読み続けたのか?
自分の問いに答えを出すとしたら、『もたない事に関する作者の徹底ぶりが
面白いと感じる。』につきるだろう。
以下、その中崎タツヤ氏の事例。
・椅子のについている背もたれは、別に寄りかかる必要がないので、ノコギリ
で切り取ってしまった。
・ボールペンのインクが減っていくのに本体が長いままなのが我慢できなくて、
インクが減るたびに、短くカッターで切っていった。ボールペンの本体を切っ
て、先と後ろを瞬間接着剤でくっつけたこともある。
・本は買っても読んだら捨てる。というか、読むそばから読み終わったページ
を破って捨てることもある。
・マンガ原稿は、段ボール箱三冊分ほど、二年前からずっと取ってあったの
だけど、すべての原稿を捨てた。ついでに一冊ずつとっておいた自分の
単行本も全部断裁して捨てた。
この本を読むと、いらない物を捨てたくなるし、かたづけをしたくなる。
片づけが苦手な人には、この本は薬のような働きがあるのではないか。
でも、この本の内容に感化されすぎて、『「もたない男」を読み終わったので、
その本自体をまず捨てました。』と、書いてある感想を読んでちょっとおか
しかった。
PR:もたない男 (新潮文庫)
賞6冠の「その女アレックス」を読んで・・・
待ってました「悪魔の人名辞典」
映画のようにCGでマンガを作成「いぬやしき」
人気作家でもこの世は砂漠?いい事は一つもない?
「昭和怪優伝」でのあの琴線に触れるお話
「流星ひとつ」沢木耕太郎の「藤圭子」インタビュー
