「ヴィオレッタ」 (原題:My Little Princess)
監督: エヴァ・イオネスコ 2011年
キャスト:イザベル・ユペール 、アナマリア・ヴァルトロメイ、ドニ・ラヴァン
2011年作製のこのフランス映画は、監督の実体験が元になっている。
母である写真家の被写体として幼い頃からヌードを含むモデルとなっていた
女優が、その経験を基に母と娘の葛藤の物語を自ら監督し映画化した作品だ。
収入を得る為に、母親が成人になっていない娘に、ヌードモデルをさせる。
もしくは動画のモデル(女優)をさせるという行為は、日本でも今でもよく聞く、
なかなかなくならない問題の一つだ。
自分の子どもの裸の画像を男(44)に販売したとして、20~40代の母親6人が
相次いで逮捕された事件が2012年にあった。
6人は各県に住むでいて面識は全くなかった。男は使用済み下着のオークショ
ンサイトで母親たちと知り合い、子持ちであると気付くと子どものポルノ画像
を要求するという手口を続けていたという。子どもの裸や陰部を写した画像が
1枚1,000円、動画が1本1,000~5,000円で男に買い取られていた。
母親たちは生活苦を動機に挙げていた。ポルノ被害に遭った子どもたちの年齢
は、最年長で8歳、最年少は生後7カ月の赤ん坊で、しかも女児が4人、男児が
3人と性別の見境もなかったとの事。この事件なども実は氷山の一角なのだろう。
でも、この映画の母親(イリナ・イオネスコ)が違うところは、自分で娘の写真撮影
を行い、芸術的に高いレベルになるように写真を撮っているところだ。
とは言っても、娘(エヴァ・イオネスコ)の立場から言えば、意に沿わないポーズ
を強要させられた事が精神的に苦痛だったということなのか。映画では描かれ
ていないが、娘は後でこの母親を訴えている。ぼくが疑問に思ったのは、その
訴えるという行為だ。
母親は娘に対して「あなたを愛しているのよ」と言い母親を拒絶する娘を追い
かけているシーンがある。映画を観た限りでは、母親を訴えなければならない
ほどに、悪い母親に見えない。色気を強調しすぎた写真が娘は嫌いだったの
か?それにしても学校に、いかにも母親が好みそうな奇抜で肌の露出の多い
服を娘があえて選択して着ていくのはどうなのか?
母親の写真集のおかげで、世に出て有名になった娘は、やがてその体験を基
に映画を創り、その映画もカンヌ映画祭で絶賛と非難の話題作となる。娘は母親
のおかげで注目を浴びてきたといえるだろう。その母親を訴えるのは、映画では
描かれなかった何か特別な理由があるのか?
その裁判の結果が出ている。パリ(Paris)の裁判所は2012年12月17日、写真家
のイリナ・イオネスコ(Irina Ionesco)被告に1万ユーロ(約111万円)の損害賠償
支払いと写真のネガフィルムの引き渡しを命じる判決を言い渡している。
一方、エヴァさん側が求めていた20万ユーロ(約2200万円)の賠償と、問題の
写真から被告が利益を得ることを禁じる措置は却下された。
ところで、映画で描こうとした内容の疑問はともかくとして、主人公を演じた女の
子、アナマリア・ヴァルトロメイがとても綺麗だ。これは、500人の中から選ばれ
ただけあって、インパクトがスゴイ。
ロリータがどうだとか、母親による被害だとか、何か映画が描こうとしたであろ
うテーマーが吹っ飛ぶくらいに綺麗だ。彼女の今後の活躍に期待したい。
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