アメリカンスナイパー

「アメリカン・スナイパー」(原題:American Sniper )
監督: クリント・イーストウッド
2014年  キャスト:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス


吉田拓郎のフォークソング「加川良の手紙」にこんな歌詞がある。


 あの日の映画 ダーティ・ハリーはどうでした
 君はニュースの方が楽しそうだったけど
 クリント・イーストウッドっていいでしょう
 こんども学割で見られたらと思います


外国の俳優の名前はほとんど覚えられなかったのに、この歌詞で、「クリン
ト・イーストウッド」に関しては、名前が一発で記憶できたものだ。
歌の力はすごい。でも、その頃はまだ映画「ダーティ・ハリー」の俳優として
名前が有名で、今の監督としての大活躍など、想像もしなかったものだ。


そのクリント・イーストウッドが、37本目の監督作品、「アメリカン・スナイパー」

を撮った。イラク戦争に4度従軍し、160人以上を射殺した海外特殊部隊の

狙撃兵クリス・カロスの自伝を映画化したもので、アメリカでは大ヒットを記録

している。


「アメリカン・スナイパー」は、多くの人から絶賛されている。
戦争賛美とか、そんなふうに批判的にも言われているらしいが、それも抜群
の興行成績とアカデミー賞で作品賞、主演男優賞を含む6部門にノミネート
されたことの前では、霞んでしまうだろう。


ぼくが新作映画を見に行くときによく参考にしている前田有一氏のサイトで、
「超映画批評」。この映画を当サイトではこのように称えていた。

『神が巨匠の作品を借りてアメリカ人に伝えようとしているメッセージ』
そして、彼はこの映画に100点を与えている。前田氏の評価ではこの映画
は完璧というわけだ。


ここまで書かれると、やはり『DVDなどではなく、映画館で誰にも邪魔され

ず、じっくり観るべき映画なのだろう』と、思った。


映画の冒頭部分で、ライフル銃のスコープを覗いているクリス。
子どもが母親に思える女性から、爆弾らしいものを渡される。クリスの鼓動
が激しくなる。ただの子どもに見えるのだが、テロリストにも見える。自分
は撃つべきか、撃たない選択をするべきか。もし子どもがテロリストで、
爆弾を使えば、大勢の戦友の死を招く。

その射撃の場面の緊迫感がよかった。

じっくりライフル銃のスコープを覗いて、引き金を引くタイミングを計って
いる場面が続く。単純に考えると、変化に乏しいあまり大きな動きのない
画面が続くわけなのだが、その日常の静寂をやぶるかのような殺しを今、
行おうとしている独得な緊迫感が画面を持たせていた。そしてそれが、多

くの観客を惹きつける事には、反戦がどうのこのうのではなく、狙ったもの

を正確に撃ち抜く密かな快感の共有が存在するのではないか。


狙撃兵クリス・カロスの役にはブラッドリー・クーパー。
クーパーは製作総指揮も務めており、本作にゾッコン惚れた。体重を20kg

近く増やし、「クリスを録画したあらゆる映像を何度も繰り返し見て、できる
限りのリサーチをした」と話しており、徹底した役作りを行ったという。


それにしても、クリント・イーストウッドは、84歳でこんな完成度の高い映画
を作るとは、改めて偉大な監督だ。


参照:84歳のイーストウッド監督史上、最大のヒット作は「良い戦争映画」ではない?

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