学生の頃に名古屋に一人暮らしをしていたことがあった。
そこで、悩まされたのが古いアパートのせいもあって、大きなゴキブリだっ
た。それは壁にへばりついていて、時に羽ばたいて、飛んだりするものだ
から、震えあがったものだ。
当然、ゴキブリホイホイなどを買って、ゴキブリ退治にはげむのだが、そん
なものでいなくなるほど、簡単なものではなかった。それで、ゴキブリホイ
ホイに捕まったゴキブリを見るのだが、その黒光りしている体は、どうにも
ならない不快感を呼び起こすものだった。
でも、ふと、そのゴキの姿を何分も観察していることがあった。見ていて、
あきないのだ。
自分で自分がわからなくなってしまう瞬間だった。
『ゴキブリの不快な姿形に、実は自分は魅せられているのか?』と。
今回買った「世界一うつくしい昆虫図鑑」は、もちろんゴキブリなどは出て
いないのだが、それでもよくよく見ると、どこかグロテスクな昆虫も中には
ある。それも、同じようにじっと眺めているとその姿に惹きつけられてくる。
しかし、ほとんどはまるで着色したかのように美しい昆虫の数々の写真集。
まさしく、ぼくが今までに見た昆虫図鑑のどれよりも美しい。
この非常に美しい昆虫の写真集『世界一うつくしい昆虫図鑑』の著者、ク
リストファー・マーレーは、「昆虫アート作品」を制作するアーティスト。
そしてかつては「長年、節足動物を慎重に避けてきた」という大の虫ぎら
いだった。
そんな彼が虫に魅かれはじめたきっかけはバンコクのナイトマーケットで
売られていた甲虫の標本箱を見つけたとき。はじめは震え上がってその場
を立ち去ろうとしたのだが「自分でも驚くような心の葛藤があった」「その
小さなモンスターから目を離せなかった。体のほかの部分は逃げ出した
がっていたというのに」という。そんな葛藤の結果、結局その標本を購入。
それから虫に魅入られ標本にする昆虫を探しはじめるのだが、それも
「おそるおそる」だったと告白している。
それでは、以下その美しいページをアマゾンから数ページ紹介していきます。
これは、昆虫(自然)に対する見方をもう一度、問いかけているかのよう。
PR:世界一うつくしい昆虫図鑑
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