ぼくが物心ついて、一番最初に好きになった歌手が南沙織だった。
南国のイメージが強い、日に焼けた小麦色の彼女が歌う「17才」
は、ぼくを別世界につれていったものだ。
だから、「17才」のシングルレコードも買ったし、後でベスト盤
のカセットテープも買った。その頃は、「平凡」というアイドル雑誌
もたまに買っていて、南沙織や天地真理、そして小柳ルミ子などの
グラビアや記事をよく読んだ思い出がある。
「南沙織」という3文字を眼にしただだけで、その頃の思い出がよみが
えってくるようだ。だから、『南沙織がいたころ』という本を読み
当時の10代の自分の感覚が何度か懐かしく思い出せた。
ところで、この本によって、沖縄に対する意見を、南沙織がしていた
ことを初めて知った。
言いたいことは一つです。沖縄の海を守って欲しい。基地はなくすべ
きですが、代わりに海を埋め立てたら、取り返しがつかない
(『朝日新聞』2010年7月17日付)
南沙織はもう表舞台にはでてこない事を誓った山口百恵と、同様の
選択をしたようにぼくは思っていたので、このように沖縄に関して発言
を何度かしているというのは、意外だった。
この本によって、初めて知ったこともあるし、文章も読みやすい。
『南沙織が引退してから10年経ち、その後、子供に沙織と名付ける
親が増えた。
それは、1970年代後半に10代後半だった世代が、結婚・出産を
迎える30歳前後になったのが、この時期。』と、いう著者の推理も
興味をひかれた。
この本に不満があるとしたら、南沙織という個人の感情のうねりが
あまり感じられなかったことだ。
どこか、この本のトーンがたんたんとしている。そこが、ちょっと
物足りなかった。
