山口県周南市で起こった連続放火殺人事件は、5人が殴り殺されている。11世
帯が暮らす小さな山あいの集落で、4世帯5人の遺体が見つかったのだ。逮捕さ
れたのは、同じ集落の無職、保見光成(ほみ・こうせい)容疑者(63)。


この事件は、横溝正史の推理小説「八つ墓村」のモデルになった岡山の「津山事件」
(1938年)に似ている。どちらも中国地方の山あいの、小さな集落で起きた惨劇で

ある。


但し、津山事件は犯人の都井睦雄(とい むつお)は2時間足らずで30名を殺して、
本人はその後、自殺している。この事件は、松本清張が書いた「ミステリーの系譜」
というノンフィクションに詳しく書かれている。
(津山事件のほかに別の事件が2編、治められている。)


津山事件の事を書いた、「闇に駆ける猟銃」というタイトルの文章は、読んでいる
うちに、じわじわと恐ろしさが心に染みてきて、一生忘れられなくなった作品。
松本清張の、ミステリー作家とは別の面での凄さを発見できる。

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ところで、この山口県の事件は7月21日夜から22日にかけて発生。
集落に住む貞森誠さん(71)方と、約60メートル離れた山本ミヤ子さん(79)方
から相次ぎ出火し、焼け跡から3人の遺体が発見された。
さらに同じ集落の河村聡子さん(73)と、近くの石村文人さん(80)が、それぞれ
自宅で遺体で見つかった。2人とも頭部に鈍器で殴られたような傷が残っていたと
いう。


保見光成(63)が、「5人を同じ木の棒で殴って殺した」と供述している。
保見が身柄を確保された山中の現場近くで、木の棒が発見されていたことも新た
に判明した。
5人はいずれも頭部を鈍器のようなもので殴打されて死亡しており、県警は木の
棒を鑑定し、供述内容の裏付けを進めている。


保見光成が二十数年前、川崎市でタイル工などをしていた当時の知人らが夕刊
フジの取材に応じた。

保見は、中学卒業後の15歳で上京し、1994年の帰郷直前まで、川崎市で過ご
していた。男性は友人の紹介で同容疑者と知り合った。


当時、保見は名前を光成ではなく中(わたる)と名乗っていたという。「自己紹介する
とき、マージャン牌の『中』にひっかけて『どうもチュンです』なんて言ってた。見た
目はいかついけど根はいいやつだった」と男性は振り返った。


JR南武線稲田堤駅から北西に約1キロメートル離れた住宅街にある2階建てア
パートで1人暮らしをしていた保見。付近の工務店でタイル工としてしばらく働き、
独立開業した同僚の会社に合流する。当時、仕事上のパートナーとなった元同僚
はこう話す。


「6~7年付き合ったけど、女遊びも、無駄遣いもしなかった。金はかなりためてた
みたい。仕事の腕も良かった」
「妙なこだわりがある男でね。昼夜問わずサングラスを掛けっぱなしにしていた。
もともとはっきりモノを言うタイプだったけれど、酒が入ると理屈っぽくなる。そのせ
いか、酒の席でケンカになることがよくあった」(元同僚)


自家用車に並々ならぬ愛情を注ぐ保見の姿も覚えている。

「車には相当金をかけていた。改造した四輪駆動車に乗っていて、ホコリひとつな
いぐらいに磨き上げていた」。愛車には、携帯電話が普及していない当時にしては
珍しく、車載電話を設置していた。


先の男性は「親の介護のために帰郷するぐらいだから、悪いやつじゃない。こっち
にいるときも、いじめられた仲間をかばったり、正義感のあるやつだった。ただ、思い
通りにいかないとヘソを曲げることもあった」と語り、こう続ける。


「あいつが故郷に帰る前日に『明日田舎に帰るから今晩飲みませんか』と誘われた
んだ。でも、どうしても都合が悪くて断った。そしたら次の日、『気をつけて帰れよ』っ
て声を掛けたのに知らん顔しやがった。そういう所があるんだよな」

彼の心に抱えた闇の解明はこれからになりそうだ。


参照:山口「八つ墓村」容疑者に衝撃証言 夜でもグラサン、マイカー偏愛…