指名手配のポスターで印象に残っていると言えば、「おい、小池!」の
コピーが話題となった、徳島父子殺害事件の小池俊一容疑者(52)。
小池俊一の容疑は、2件の殺人事件だった。
事件が起きたのは平成13年の4月20日のこと。
徳島市内に住む松田優さん(当時66)の自宅から出火し、焼け跡で松田
さんの遺体が見つかった。さらに計4000万円の預貯金通帳と実印が
無くなっていた。
その翌日には優さんの長男の浩史さん(38)が、淡路島の空き地で
焼死体となって発見された。
徳島県警は小池の行方を追ったが、既に自宅から姿を晦ました後だった。
県警は広く情報を求めるために思い切った手段に出た。
それが「おい、小池!」のポスター制作で、普通の手配ポスターでは
インパクトがないということで、外部のデザイナーに制作を頼み、
あのキャッチフレーズを入れてもらったという。
このコピーで、これだけ名前がみんなに意識されるとしたら、これからは
指名手配は、必ず上に何か呼びかけの言葉を入れた方がいいのではな
いかと思うほどだ。
しかし、事件の犯人は指名手配から11年を経て、死亡しているのが見つ
かった。だから、『ポスターばかり注目されてあまり役にたたなかった』と
いう説も見受けられるが、それでも何も注目を浴びず忘れ去られている
よりは、逮捕のきっかけをつかみやすいのではないかと思う。
「うわあ、こりゃ分からんわ」。
父子殺害事件の捜査に長年携わってきた徳島県警の捜査員は小池容疑
者の遺体を見て、ポスターとのあまりの違いにため息をついたという。
濃かった眉毛は細くそり落とされ、頭髪も薄くなっていた。
捜査幹部は「自分にポスターのイメージしかなければ、日々すれ違っていて
も分からないだろう」と漏らした。
これは、その当時の写真の持つインパクトが、見る人に固定化される為で
あろう。
犯罪捜査に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪社会学)は、「日常生活で
正面からの無表情な顔を見ることはまずない」と指摘。その上で、今年6月
に逮捕されたオウム真理教元信者の高橋克也被告の捜査で、警視庁が
防犯カメラの映像などを公開したことを挙げ、「監視カメラの画像も含め、
いろんな角度、表情のものをどんどん出すべきだ」と主張する。
ところで、この逃亡犯・小池俊一を7年間匿い続けたのが67歳の女性。
捜査関係者が言うには、
「小池よりも、女の方が入れ込んでいたみたいだ。ヤツがホテル暮らしを
していると話したら、彼女が”ホテル代がもったいないから、一緒に住もう”
と同居話を持ちかけたと聞いている」
つまり、この女性は殺人鬼とも知らず、15歳も年下の男を逆ナンパした
事になる。
その女性は、同棲と前後して自宅近くのビジネスホテルへ転職している。
捜査関係者によると、1日10時間以上も働いているのに、小池を働かせ
ようとした様子もないという。その多いとはいえない給料の中から、小池に
食費名目で月2万円の小遣いを渡していたという。
小池にとって、同棲していた女性にとっての7年間はどのような生活で
あったのだろうか?
そして、女性は今後、小池との想い出を胸にどのように、生きていくのか?
何か一つの小説にでもなりそうな、気がしてしまう。ぼくにとって、気に
なる結末の事件だった。
