31. マーティン・スコセッシ 「タクシードライバー」(1976年)

何かさびしげな背中を持つ、ロバート・デ・ニーロの名演技が忘れられな
い映画。


彼は映画の役作りの為に数週間、実際にタクシーの運転手を務めたという。

世の中から孤立して、世間との接点をみつけられずにさまよっている自分
の心と、タクシー運転手をしながら車内から見える夜の都会の光景が
シンクロして映像のブルースでも見ているような気持ちにさせてくれた。


体を鍛えてモヒカン刈りにして、自分の外見から変えていくことが、やが
ては行動まで変えていくことにつながる。
一つの変身願望の夢を、そこでタクシードライバーが実現させて見せる。


売春で生計を立てる、可憐な少女アイリスを演じたジョディ・フォスター
は当時13歳だった。彼女の存在感もこの映画で記憶に残っている。


町山智浩の書いた「<映画の見方>がわかる本」では、タクシードライバー
が、どのような経過をえて、1本の映画になったかを書いてある。


「タクシードライバー」は、「暗殺者の日記」という犯罪者の書いた日記
の本がヒントになっている。
アラバマ洲知事ジョージ・ウオーレンスを銃撃した犯人アーサー・ブレマー
の日記で、当時21歳。小さくひ弱で、劣等生だった彼は学校生活をこう
振り返る。


「歴史も数学の勉強も辛くない。学校の食堂で楽しく談笑しているみんなを
みながら、いつも一人ぽっちで昼食を食べることに比べれば」
一人も友達がいないまま高校を卒業したブレマーは、部屋に引きこもって
エロ本を読みふけり、手に入れた拳銃を弄んでいた。


1972年5月15日、ブレマーは遊説注のウオーレンスに至近距離から銃弾を
5発撃ちこんだ。ウオーレンスは命を取り留めたが下半身不随になり、
ブレマーは逮捕。彼の自動車から日記が発見される。
その年のうちに出版された。ブレマーは童貞のまま懲役64年の刑に処せ

られたという。


ブレマーの日記に書かれていたのは壮絶なまでの孤独で、そこに感銘を
受けたポール・シュレイダーは10日間で一気に『タクシードライバー』
のシナリオを書き上げたという。


シュレイダーはシナリオを「愛のメモリー」(76年)で組んだブライマン・デ・

パルマ監督に渡したが、デ・パルマはマーティン・スコセッシを推薦した。
スコセッシは「タクシードライバー」に熱狂した。
また、デ・パルマとスコセッシの親友ロバート・デ・ニーロが、何が何でも
トラヴィスを演じたいと申し出たとのこと。


32. ウィリアム・ワイラー 「ベンハー」(1976年)


今まで見た映画の中では、ダントツにスケールの大きさを感じさせる
ダイナミックな映画。
「旧約聖書」にもとづいたキリスト劇の大作。

『54億円もの制作費が投入されたが、この映画1本で倒産寸前だった
MGMを一気に立て直すことができた。』という、エピソードも納得の
出来栄え。
同年アカデミー賞にて11部門を獲得している。


33. ジョン・ウー「フェイス/オフ」 (1997年)


監督は、「ヴァイオレンスの詩人」の異名をとり、「男たちの挽歌」など
で香港ノワールの一時代を築いたジョン・ウー。


映画は憎むべき相手と互いに顔を取り替えた二人の男の果てしなき死闘を
描いている。


ストリーに、退屈させる場面がない。銃撃戦の場面も迫力の中にも美しさ
を感じさせる独特なアクション。
これだけ充実した面白さに満ちている映画もなかなかない。


参照:タクシードライバー 製作35周年記念 HDデジタル・リマスター版 ブルーレイ・コレクターズ・エディション 【初回生産限定】 [Blu-ray]
    ベン・ハー 特別版 [DVD]  
    フェイス/オフ [Blu-ray]

    映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)