10.ニール・ブロムカンプ「 第9地区」(2009年)
タイヤを食べるのが好きというなんとも愛想のない、そして人間からみて不細工
で不潔っぽい宇宙人のキャラクター設定がいい。その宇宙人をスラムのような
場所に一ヶ所に集めて、人間とかかわりのない場所で、管理しようとする差別意識
をそこに見る。
そこの世界に、はまり込んでレポートする小役人風の男の哀しい運命。
すぐれたSF映画であると同時に、人間の異人種に対する排除意識や差別意識も
描いており、他の単なるパニックSF物とは一線を画す作品である。
出演者はほとんど無名俳優であり、主演のシャールト・コプリーは監督の高校時代
の友人であるという。セリフは、シャールトによるアドリブであるとのことで、
ここだけ聞くといかにもつまらなそうな映画に思えてしまうのだが、2009年にみた
映画のなかでは自分のなかで1番の面白い映画だった。
11.オリヴァー・ヒルシュビーゲル『es[エス]』 (2001年)
アメリカで実際にあった大学の実験を元に作られた映画。
実験のアルバイトに応募しててきた20名の人たちを、囚人約と看守役に分けてそれ
ぞれの役割を演じさせた場合の心理的な変化、行動の変化を観察しようとした。
この映画は人間の本質に迫る迫力をもっており、かなり怖い。二度とみたくないと
いう感想を持つ人もいるようだ。
実際の実験でも、囚人役で反抗的なものに、罰則を与えバケツに排便させるなど
エスカレートしていき、ついには暴動が起きて、2週間の予定が6日間で中止になっ
たという。
看守役の人は、実験の継続を望んだという。アルバイト料が継続してもらえるとい
う事のほかに、何かしらの他人の優位に立つ役割というのはそれだけ、魅力的とい
うわけなのか?
映画に関していえば最初のシーンで、タクシー運転手兼記者の主人公の男性が振り
返る、彼女との幻想的なシーンが、美しかった。意外に、このシーンが不要だと
思う人が多いようだが・・・・・・。
また、実験を見守る助手の女性が、看守役のエスカレートにより裸にされたときに、
一見まじめそうに見える彼女の裸にSM的な遊戯をおもわせる証拠がみられた。
そんな映画の本筋とはちょっとずれた面でも楽しませてくれた映画だった。
12.パティ・ジェンキンス「モンスター」(2003年)
美人女優であるシャーリーズ・セロンが、普通の太って魅力のないおばさんに逆変身
した見ごたえのある映画。セロンはこの役の為に13キロ太ったという。
実在した元娼婦の連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスの生涯を映画化した。
ドライバー相手の売春婦で、1989年から1991年にかけて男性7人を銃殺。2002年に
薬物注射で死刑が執行された。
聖書と一緒に火葬されることを望み、最後の言葉は「私はキリストと船に乗って
旅立ち、再び地上に現れる。 I'll be back !」だった。
シャーリーズ・セロンがみごとにブスに変身したせいか、バーでアイリーンが知り
合う同性愛者のセルビー役の女性(クリスティーナ・リッチ)が、ちっちゃくて、表情
がシャイでとても可愛らしく印象に残った。
映画では、2人の関係は短かったように描かれているが、実際には3年同棲。その間
の生活は売春と窃盗で稼いでいたという。
また、実際の事件の犯人であるアイリーン・ウォーノスが出演するドキュメンタリー
ムービー作品も見た。タイトルは『アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女』。
彼女は、最初に語っていた事件に関する内容を突然、後半に変えていく。この後半の
告白がやたら迫力があり、見ごたえがあり、「モンスター」同様に忘れられない作品
となった。
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