「ミッション:8ミニッツ」、まるでトムクルーズのミッション・イン・
ポッシブルの新作かと間違うようなその題名の映画を観た。
この映画を観たら、井上揚水の歌を想いだした。
「人生が二度あれば」という歌。
歌詞を数行、紹介すると…
父は今年ニ月で六十五 顔のシワは ふえてゆくばかり
仕事に追われ このごろやっと ゆとりが出来た
父の湯飲み茶碗は 欠けている
それにお茶を入れて 飲んでいる
湯飲みに写る自分の顔を じっと見ている
そして、陽水のせつない綺麗な声で”人生が二度あれば”を何度も
熱唱。
過ぎ去ったある時間に自分をそこに戻して、やり直したいというタ
イムマシンを使うような発想はだれもが1度は思ったことがあるの
ではないか。
さて、映画の話しに戻るけれど、この映画の面白いところは、納得の
いくまで何度でも指定の時間の同じ場所に、戻るというところだ。
「人生が2度あれば」どころではなく、8分間だけだけど、人生を
何度でも限れた場所と時間の中で繰り返される。
最後に主人公の米軍大尉コルター(ジェイク・ギレンホール)が、
「生命維持装置を切ってくれ。」
とお願いするほどに、列車爆発事故の犯人を捕まえるまで、人生を
繰り返される。
人生の繰り返しとは、過去にさかのぼることだが、そのためにはいっ
たん現在の時間に戻ってくる。そこで、主人公が会話を持つのが、
モニターに映るゴッドウィン(ベラ・ファミーガ)と名乗る中年の女性
司令官。
最初、その女性は単に「主人公とコンタクトを持つ中年の女性」と
いう位置づけでしかなかった。でも、不思議なことに彼女がとても
魅力的に見えてくるのだ。
映画では、コルター大尉が爆発前の電車に戻ると、目の前に座っ
ている若い女性・クリスティーナがほほ笑みかけてくる。
その女性より、不安をためこんだような表情で仕事をすすめていく
中年の彼女が良くみえてくるのだ。
どうして、そんなふうに感じてしまうのか、我ながらわからない。
でも、そう思ったのはぼくだけではなくて、中には「軍の女性と列車
の女性を交代した方がいいかも」なんてゆうコメントを残した人もいる。
思えばこの映画は、発想はSFなのにサスペンスの要素もあり、恋愛
ものの味付けもあり、ずいぶん盛りだくさんだ。そのどれもが成功し
ている映画だ。
この映画に関して語る多くの人が、ダンカン・ジョーンズ監督の前作
「月に囚われた男」を上げる人が多い。よほど印象深い映画だったの
だろう。それも機会があったら見たいと思った。
ほぼ、完璧な映画なのだが一つ残念なことがあった。
それは、ラストのストーリー。ここにきて、ぼくには意味がよくわか
らなくなってしまった。
その事を書いている人はあまりいないので、たぶん他の人には良く
理解できたのであろう。『映画を見て、すっきり気分で家に帰る』と
いう予定で観た映画なのに、少しモヤモヤが心に残った。
今度、この映画を観た人にラストの意味を聞いてみよう。
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