- 冷たい熱帯魚 [DVD]/吹越満,でんでん,黒沢あすか
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一人の女性が商品カゴの中に、店の食品を次々に無造作に入れて
ゆく・・・・・・と、言うよりは選びもせずに放りこんでゆく。
そして家に着くと、そこで買ったパックのご飯や冷凍食品を電子
レンジでチンしながら、テーブルの上に並べて食事の出来上がり。
その食事は、熱帯魚の店のどこか神経質そうな線の弱そうな店主の
後妻に来た女が作ったもの。
後妻の女性は、胸が大きく色っぽい。それは、水商売上りを想わせる
風情だ。
どこかしっくりこない家族の食事が始まる。
その後妻は、娘に毛嫌いされている。ついでに娘は父親も嫌いなよう
だ。
このオープニングのテンポが良く、DVD映画「冷たい熱帯魚」に
期待させられた。思わず、DVDで見終わるのがもったいないような
気がして、「名画座で再上映するまで、待とうかな?」と、思ったほ
どだ。
熱帯魚の店の男は、娘の万引きがきっかけで、同じく熱帯魚を売って
いる同業者の男と知り合う。その55歳くらいの男は陽気で、反抗ばか
りしている娘も、その男には笑顔になってしまう。
しかし、その陽気な男のおかげで、運命が狂いだすのであった。
娘を男の店にあずけて、本人は知り合った男のバラバラ殺人の手助けを
する。
これは、埼玉県で実際に起きた事件を元にして作っている。
1993年、4月から8月に埼玉県で起こった愛犬家ら、男女四人が殺害
された事件で、「愛犬家殺人事件」と呼ばれている。
つまり実際の犯人は、映画のように熱帯魚ではなく、犬を売っていた。
そして、映画と同じように「死体さえみつからなければ、捕まる事は
ない」と、殺人を重ねていく。
この事件に関しては、山崎永幸(やまざき・ながゆき)著作の
「目撃者」(後に愛犬家連続殺人というタイトルで文庫にて発売)と
いう傑作ノンフィクションがある。もっともこの本は、大阪万博を
テーマにした小説『水曜の朝、午前三時』でベストセラーとなった
作家・蓮見圭一(はすみ・けいいち)がゴーストライターをしている。
さて、映画の話に戻るが、男がバラバラ殺人に巻き込まれるところま
ではとても良かった。
犬と熱帯魚の違いはあるものの、実際に起こった事件とオーバー
ラップして、こちらに外面の良さとは裏腹の、残虐な面を持つ男の手
助けをさせられる、奇妙な怖さが伝わったから。
しかし、それも後半になるとぶっ飛びすぎて、ありえない展開になる。
そのぶっ飛びすぎが映画の緊張感を逆に半減させてしまった。
そこがとても残念だ。
ぜひ後半を新たなアイデアで、「冷たい熱帯魚」を撮りなおしてほしい
ものだ。