心をスッキリさせてくれない何か納得のいかない事件というものは
あるものだ。
7月10日、60歳の女性・井口清美さんが奈良県の山の中で遺体で
みつかった。死後、半年以内と推定されたわりには、遺体が見つか
るわずか20日前には生きていたことがわかった。
これだけ、死後の推定日があてにならないものなのか?
この死後半年以内という大幅な設定は、現在の科学ではしょうがない
ものなのか?
彼女が山の中で見つかったときは、頭蓋骨と数点の骨のかけらのみ。
砕かれた形跡もあり、骨のかけらには数センチ単位で切断された跡が
あった。
奈良県警は遺体を司法解剖したが死因はつかめず、当初は身元すら
特定できなかったという。
そして、彼女を殺したと思われる犯人が関西国際空港で見つかった。
7月8日午後、中東のドバイ経由で英国に出国しようとしていたという。
男の名前は永井真太郎(34)。
日付を見ると、遺体がみつかる2日前であることがわかる。
逮捕容疑は、永井が元交際相手の母親である井口清美さんのクレジット
カードを使い、現金引き出そうとしたことだった。
永井は7月1日、奈良県生駒市内のコンビニのATM(現金自動預払機)
で井口さん名義のカードで現金20万円を引き出そうとしたが、暗証番号
を間違えて失敗、8日に窃盗未遂容疑で生駒署に逮捕された。
しかし、県警が重要視していたのは、6月下旬から井口清美さんの消息
が分からなくなっていたことだ。
主婦の姿が見えなくなっていた7月上旬、主婦宅の駐車場で主婦の車を
駐車している男が目撃されていた。
近隣住民が「(主婦は)どちらに行っているのか」と尋ねると、男は
「長い旅行に出ている」と答えたが、主婦が旅行に出掛けた形跡はな
かった。
永井真太郎は約1カ月半にわたる取り調べに対し、不自然な答えをくり
返したという。
「家に行ったら死んでいた。殺したと思われたくないから、バラバラに
して埋めた」
「女性の遺体を(生駒山の)宝山寺近くに埋めた」
窃盗未遂容疑については「井口さんからカードを使っていいという承諾
があった」と否認する。一方、逮捕後すぐに井口さんの遺体を生駒山中
に埋めたと供述し始めた。
永井真太郎は岐阜県の出身。高校卒業後、結婚して子供ももうけていた。
しかし、離婚をきっかけに数年前、「手に職をもちたい」と沖縄県で
作業療法士を目指す専門学校に入学する。しかし、「周囲とトラブルが絶
えなかった」(沖縄の専門学校の知人)ことなどから1年あまりで退学。
3年ほど前に生駒市内の理学療法士の養成課程がある専門学校に入り直
した。
井口さんの次女と知り合い、交際を始めたのもそのころだった。
そして今春、永井は理学療法士の国家試験を受験するも不合格。次女が
英国に留学した5月以降、井口清美さんは生駒市の自宅で1人暮らしと
なった。その井口さんと永井の関係を詳しく知る者はいない。
6月下旬から姿が見えなくなった井口さんの異変に気付き、県外に住む
長女が捜索願を出したのは7月5日だった。
6月下旬には井口さんの携帯電話から「韓国へ旅行に行っている」とい
うメールが長女に届いたが、実際に出国した記録はなかった。
同じころ、知人に井口さんの携帯電話から着信があり、男の声で「井口
さんは旅行に行っているので心配しないで」と告げられたという。
この間に永井が井口さんのカードを複数枚所持し、現金を引き出してい
たことが捜査で確認された。
「死体遺棄・損壊は(井口さん殺害の)隠蔽工作以外の何物でもない。
永井被告以外に井口さんの死に関わった人間はいない」
県警がこう疑うに足る状況証拠が固まりつつあった。
永井真太郎が井口清美さんの死に関わったとする物的証拠は皆無といっ
てよかった。見つかったわずかな遺体の骨では死因を特定できず、凶器
や殺害方法も不明のまま。
永井も殺害については「全く事実にないことです」と否認を貫き通したと
言う。しかし、『殺したと思われたくないから、バラバラにして埋めた』と
いう供述は、苦しい。
殺害に関わったことがなくて、殺したと思われる事を避けるためだけに、
知っている人物をバラバラにできる人間というのは、普通はいないだろう。
遺体の大半が見つかっていないのはなぜか。
極端に短期間で白骨化したのはなぜか。
そして、井口さんはなぜ殺されなければならなかったのか。裁判で多くの
「なぜ」は解明されるのだろうか。