ぼくは、故郷の青森に盆休みは帰った。
色気抜きで、飲みすぎの食べすぎで、腹もずいぶん不健康にふくれ
てしまったようだ。
ぼくが太ろうがやせようが世間は何も感心を持たない事だろう
けど、さすがに自分としても「この体型はちとカッコ悪いかな?」
と思い始めている。
新幹線が青森の八戸から大宮について、そこから川越行きに乗る。
相変わらず、電車はそこそこ混んでいて、座れない。
立っていると、疲れるし、暇だ。
ぼくは座っている女の子の頭を上から何気に見る。
レゲエにかぶれているらしく、ボサボサ頭で毛虫のようなかたまり
で髪が細かく束ねられている。「色っぽくないねぇ」と、思った。
ふと・・・
その女の子の胸に目がゆく。とっても肌が白くてきれいな胸の
谷間が目に入る。
ゴミ箱のような頭に比べて、なんてきれいな胸を持っているんだ!
思わず、その胸に顔を押し付けたくなってしまった。その胸の谷間の
露出に100点を上げたい気持ちだった。
青森に帰ったときは、あまりHな気持ちにならなかったのに、こちら
に戻ると、さっそくエロ魂が復活し始める。
埼玉のマンションに帰って、デジカメで写した写真をパソコンに写す。
それをアップで見て深くため息。
「なんちゅうーぽこっとしたしょうもない腹をしてるのか!」と。
ぼくと母が、浅虫の海をバックにして撮った写真だ。海のさわや
かさに比べ、ぼくの緊張感のない「ぽよよんン腹」は、実になさけない。
これでは、いざというとき裸にもなれはしない。
いい年こいて、「電気は消して・・・」なんて、
乙女のようなセリフをはくことになってしまいそうだ。
痩せる事を考える。じっと考える。
やせてやせて、理想体重なんて考えず骨と皮だけになろう。
骨と皮を通り越して、骨だけになろう。
骨もやせさせて、一本の線になってしまおう。
そうしたら、パンツもTシャツさえもいらない。
線になった体は、夏にすっぱだかで過ごせそうだ。
そして線になったぼいは、へびのごとく地面をうごめいて、好きな女の
住む場所まで冒険に行こう。
そっと、夜中に彼女の寝ているところまで、忍び込むのだ。
そして、線になった体で、好きな女の体を身動きできないように、ぐる
ぐる巻きにしてやろう。彼女のいたるところに自分の線が、巻きつく。
これは気持ち良さそうだ!
なんてゆう妄想が浮かんでは消えて・・・・
ところで、妄想に遊んでいる場合ではない。哀しいことに、たくさん
あるかのごとく見えた盆休みももう消えた過去のもの。
早いねぇ。早すぎる。
また、往復4時間の通勤が始まっている。
見たくもない顔を、たくさんたくさん見なければならないこの辛さ。
見せたくもない顔を晒すこのしんどさ。