● 電車がこない
ショート・ショートというのは、一時ものすごくはやったのに、
今ではあまり本屋でみない。
短編はあるんだけど、ショート・ショート集というのはどこに
消えてしまったのか。
ページで4枚くらいの長さというのは、気分転換にちょうど
よく、ありがたいのに。
そんなわけで、たまに古本屋に行くと、ショート・ショート集
に手が伸びる。
ぼくが買ったのは、1984年初版・眉村卓の「ふつうの家族」
(角川文庫 380円)。
その本を105円で買って読んでいる。
「すごくうまい!」と感心するようなストリーはなくて、
「こうすればよかったのに」と、あれこれストーリーに
対する想像力を刺激してくれるのがうれしい。
たとえば、「電車を待てば」というタイトル。そのストーリー
の一部を紹介したい。
荒川氏は駅で、電車を待っている間に英会話のテープを
聴いて、いくつか記憶していた。
顔をあげると電車がやってくる。
電車はスピードを落として近づき・・・・停車もせずに、ホーム
をそのまま通りすぎていく。電車には一人も乗っていない。
回送電車と思って、また電車を待つのだが、今度の電車も
待っている人を無視して通過していった。
荒川氏の回りで、騒ぎ始めた。
「これはどうしたんだ?」
「どうして電車がとまらないんだ?」
「馬鹿にしないでよ!これじゃ遅刻するじゃないの!」
なぜ無人の電車が通過していくのかが、ひとつの謎として
読者を物語に引っ張る。
しかし、その納得のいく説明は、ショートショートの中でされて
いない。それらしい説明はあるのだが、それが無人電車の
通過の全てを解明するものではない。
まさしく、『読者の想像におまかせ・・・』というスタイルなのだ。
だから、逆に自分だったらこのようなストーリーに変えて
作品にするのに、という作家的発想に運んでくれる。
● 巨乳と小乳
「巨乳vs.小乳」
というとても興味を引かれる戦い。
いや、別に乳同士で戦うわけではない。そのようなイメージ
をもってしまう本の中のエッセータイトル(「巨乳vs.小乳」)
が、興味を引かれた。
この本は、近所の本屋で定価619円を出して買った。
本のタイトルは長い。鹿島茂の『「乳房とサルトル」関係者
以外立ち読み禁止』という。光文社知恵の森文庫から出て
いる。
鹿島茂は、巨乳時代をこう分析する。
右を向いても左を向いても巨乳、巨乳。世の男性は巨乳ば
かりをちやほやするという昨今の巨乳ブームが、無意識の
部分でバブル崩壊からデフレに至るここ十数年の経済事情と
しっかり結びついているようなので、おろそかにできない時代
的要因を含んでいる。
でっかいオッパイをしっかり観察すると、時代の隠された意味
が見えてくる。
「ほんとかなぁ?」とぼくは半信半疑。
まあ、鹿島氏の書いてあることにいちいち疑問をはさんでい
てもしょうがないのだが、こんな考え方もあるのだという発想
の面で参考になる。
全ての内容が、興味をひくものではないのだが、中にとんでも
ないような発想や歴史的指摘が含まれている。
「フランスの貴族階級の女性の間には「恋愛は結婚の後にす
るもの、それも夫以外の男性と」という不文律があった。
このような事もぼくは初めてきくこと。
本当かどうか・・・興味が湧いてくるところ。