「恋するベーカリー」というメリル・ストリープが主演の映画を
以前にみた。
メリル・ストリープ演じるジェーンは、3人の子持ち。
ジェーンは別れたはずの夫と再度、よりをもどしてしまう。
でも元夫は別の若い奥さんと結婚しているので、それは不倫
になってしまう。
そのことであれこれ悩む中年女性の姿をユーモラスに描いて
いた。
ぼくは、その映画はとても楽しく見た。
でも、他の人が書いたその映画に対する感想を読んで驚いた。
それはこんなふうに書かれていた。
『正直、あのメリル・ストリープとボールドウィンの老獪ぶり
には吐き気を催すんですが・・・
人間いくつになってもセックスしないとダメね・・・
というお話。』
『じじばばが、懐かしんでみるには丁度いい写真かな。』
映画を”写真”と表現するところから見ると、年配の方なの
かもしれないが、それにしても「吐き気を催す」とは驚いた。
それくらい、年を取ってからのセックスという事に関して
拒否反応があるのだろう。
では、その人はもしこの本を読んだらどんな気持ちになるのか
興味がわく。
三十八歳年下の女性との恋愛の軌跡を書いた「老醜の記」と
いう小説。
実体験に基づいて本にしてある。作者は「勝目 梓」。
初老の男は作家で59歳。相手の女性は銀座のホステスで
21歳。それから13年にわたる大人の恋を描いている。
彼女は作家のことを最初に先生と呼んでいたが、やがて
「爺や」と呼ぶ。
作家は以前、結婚していたのだが、今は独身だ。
彼女は作家との結婚を望み、作家はそれを無理だと諭す。
その小説では、たえず自分の年齢を意識している作家の心情
が表現されている。自ら、彼女に別れを宣言するのだが、
何度も関係が戻ってしまう。それは、女性の方が作家から離れ
ることができないようなのだ。
たとえば、こんな小説の一場面にも、その様子が窺がえる。
「結婚すれば、年が開いてても自然に夫婦に見えるようにな
るって。
うんと年の違う夫婦って、世間にはいっぱいいるじゃない。
だから結婚しよう、爺や。ね?」
千恵子は笑って言うと、片山の盃と自分の盃に酒を満たし、
乾杯の仕種をした。
「変なところから流れ弾丸が飛んできたな。結婚は無理だっ
て。
千恵子はまだ25歳なんだよ。この先いい相手がいっぱい出て
くるにきまってるんだから。
おれみたいな子種無し、ニ度の離婚と銀座の酒とで財産もなし。
間もなく寝たきりか惚け老人になるだけの特別に極め付けの
貧乏くじを、好きこのんで千穂子が引くことはないじゃないか。
そうだろう?」
『彼女が年齢を気にしていないんだから、小説家はドンと構え
ていればいいじゃないか』
と、何度も読んでいても思ったのだが、三十八歳の年齢差は
そんな簡単なものではないのか?
このような小説を買うこと。書かれていることに興味を持つ
こと。励まされること、共感すること。
つまりはぼくが年を取ったということにもつながるのか・・・。
以前にみた。
メリル・ストリープ演じるジェーンは、3人の子持ち。
ジェーンは別れたはずの夫と再度、よりをもどしてしまう。
でも元夫は別の若い奥さんと結婚しているので、それは不倫
になってしまう。
そのことであれこれ悩む中年女性の姿をユーモラスに描いて
いた。
ぼくは、その映画はとても楽しく見た。
でも、他の人が書いたその映画に対する感想を読んで驚いた。
それはこんなふうに書かれていた。
『正直、あのメリル・ストリープとボールドウィンの老獪ぶり
には吐き気を催すんですが・・・
人間いくつになってもセックスしないとダメね・・・
というお話。』
『じじばばが、懐かしんでみるには丁度いい写真かな。』
映画を”写真”と表現するところから見ると、年配の方なの
かもしれないが、それにしても「吐き気を催す」とは驚いた。
それくらい、年を取ってからのセックスという事に関して
拒否反応があるのだろう。
では、その人はもしこの本を読んだらどんな気持ちになるのか
興味がわく。
三十八歳年下の女性との恋愛の軌跡を書いた「老醜の記」と
いう小説。
実体験に基づいて本にしてある。作者は「勝目 梓」。
初老の男は作家で59歳。相手の女性は銀座のホステスで
21歳。それから13年にわたる大人の恋を描いている。
彼女は作家のことを最初に先生と呼んでいたが、やがて
「爺や」と呼ぶ。
作家は以前、結婚していたのだが、今は独身だ。
彼女は作家との結婚を望み、作家はそれを無理だと諭す。
その小説では、たえず自分の年齢を意識している作家の心情
が表現されている。自ら、彼女に別れを宣言するのだが、
何度も関係が戻ってしまう。それは、女性の方が作家から離れ
ることができないようなのだ。
たとえば、こんな小説の一場面にも、その様子が窺がえる。
「結婚すれば、年が開いてても自然に夫婦に見えるようにな
るって。
うんと年の違う夫婦って、世間にはいっぱいいるじゃない。
だから結婚しよう、爺や。ね?」
千恵子は笑って言うと、片山の盃と自分の盃に酒を満たし、
乾杯の仕種をした。
「変なところから流れ弾丸が飛んできたな。結婚は無理だっ
て。
千恵子はまだ25歳なんだよ。この先いい相手がいっぱい出て
くるにきまってるんだから。
おれみたいな子種無し、ニ度の離婚と銀座の酒とで財産もなし。
間もなく寝たきりか惚け老人になるだけの特別に極め付けの
貧乏くじを、好きこのんで千穂子が引くことはないじゃないか。
そうだろう?」
『彼女が年齢を気にしていないんだから、小説家はドンと構え
ていればいいじゃないか』
と、何度も読んでいても思ったのだが、三十八歳の年齢差は
そんな簡単なものではないのか?
このような小説を買うこと。書かれていることに興味を持つ
こと。励まされること、共感すること。
つまりはぼくが年を取ったということにもつながるのか・・・。
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