前回のコラムの「5R (Five Rights)」は、医薬品投与の最終行為者である看護師のエラー防止のための確認点です。
 ところが、この「5R」が、「6R」とか「8R」に拡大しています。拡大した点の確認も医師や薬剤師にとって参考になると思いますので、今回は「5R」以外の確認点について説明します。

 

5 Rights から 8 Rights 確認へ

 「8 Rights」について知ったのは、2011年5月の次の論文の記事。やはり、アメリカ合衆国(USA)の看護領域のものです。

 

 この「8 Rights」では、次の3点が追加されています。

 ・「Right documentation : 記録は正しいか?」
 ・「Right reason (purpose) : 投与の理由(目的)は正しいか?」

 ・「Righht Responce : 治療への反応は正しいか?」

 

 追加されている3点は、投与時の確認事項ではなく、投与行為以前あるいは投与後の確認点です。看護師だけでなく、医師と薬剤師にも活用できるように、順にまとめます。

 

〇 投与の理由(目的)は正しいか?

 医師が薬物治療を選択し、患者に治療薬を投与する場合、目標とする病気に対する効果が確認されているものでなければなりません。これまで、医薬品の名前が似ているために、誤って別の医薬品が処方されるというエラーが何度も報告されています。
 患者治療は、医師だけで行うものではありません。患者にとっては、医師、薬剤師と看護師の誰のエラーであっても、健康被害を受けるという点では同じです。

 

 具体的には、次の2つが大切な確認点です。 

 ① 処方された医薬品を使用する根拠を確認する。

  ・患者の病歴は何か?

  ・処方された医薬品は、患者の病気の治療に使用されるものか?
 ➁ 投与時の5R確認が行われたとしても、それで終わりではありません。投与した医薬品の治療効果と有害な反応が患者に認められているかについて、継続して患者を観察することが必要です。 

   ① 医薬品が医薬品が望ましい(期待通りの)効果を示しているかを確認する。

  ・治療効果の目安(指標)となる検査値に改善が認められているか?
   ➁ 医薬品投与に関連する可能性のある有害反応が現れていないか?

 ③ 医薬品の有害作用の早期検出に必要な臨床検査が行われているか?
     ・指標となる検査値とバイタルサインに異常はないか? 

 

〇 記録は正しいか?

 記録は、それぞれの職種のものではなく、医師、看護師や薬剤師などすべての医療提供者が共有できるものでなくてはなりません。記録の抜けがないよう、また、記録の負担を軽くするために、そして、読みやすいためにも、コンピュータ・システムの利用が必要です。

 

 記録は、最低限、次の点が必要です。

 ① 医薬品の投与実施についての情報を記録する
  ・投与量、投与時間、投与ルート、注射部位など

 ➁ 患者の観察(モニタリング)結果を記録する

  ・有害反応の発現状況(「異常なし」も重要な情報)

  ・投与前と投与後に確認する必要がある検査値とバイタルサインの結果

 

 USAでは、さらに「12 Rights」まであるようですが、少なくとも、この「8 Rights」の確認は必要・・・と思います。

 

 余談ですが・・・
「医薬品投与時のエラー防止」についてのUSAの看護師国家試験用の教育動画は、参考になります。時々、現場の様子も映りますので、興味がある方は、ご覧になってください。

ほんと、便利な時代・・・です !!