またまた、製剤容器に貼られたラベルの話です。
注射剤の個人別セットをしている頃から、ずっと気になっていたのが、

製剤容器の狭いスペースに色々な情報が書かれたラベルでした。

全国各地の医療機関で「医療安全」についての講演をさせていただいた時、
聴き手のご協力を得て、ある調査を行いました(2011年11月~2012年7月)。

 

その調査とは、注射剤を取り扱う医師、看護師と薬剤師を対象に、

注射剤に貼られているラベルに書かれている項目について、

➀どこに目が惹かれるか(目立つか)?
➁どこを確認するか?

を、それぞれ4個、選んでいただきました。

 

調査に用いたのは、国内最大と世界最大の製薬会社の製品です。
まず、武田薬品の「パンスポリン静注用」の方から紹介します。

注射剤を取り扱う医療提供者にとっては、
確認する必要がある項目が目立つと助かります。

調査結果を、表に示しました。

職種によって、順位に差がありますが、確認する項目は、ほぼ同じです。
ただし、「経路」については、

投与する立場の医師と看護師と、そうでない薬剤師では分かれます。

立場で結果が異なるので、調査目的に応じて、医師、看護師と薬剤師、そして、患者を含めて行うことが大切です。

 

驚いたのが(予想通りでしたが・・・)、

確認の必要がない「会社ロゴ」が全職種で4位以内に入っている点です。

続いて、ファイザーの「スルペラゾン静注用」です。

結果を見ると、確認する項目は、3職種でほぼ同じです。

ところが、目立つ項目として、

「会社ロゴ」、「英略語(SP)」と「紺色の帯」が、

3職種に共通して3位から5位を占めました。

(ファイザー社にとっては、うれしい結果かもしれません)

製薬会社にしてみれば、
会社のロゴ(マーク)とシンボル・カラーは重要です。
でも、医療提供者にとっては、業務上、それらは必要な情報ではありません。

また、色を変えた「SP」という英略語の表示は不要・・・です。

 

会社ロゴにしても、背景が必要かどうかで、目立ち方が異なります。

白地ではなく、着色した背景は、スペースを取ります。

製剤容器に貼られたラベルの表示デザインは、

医療提供者が必要とする情報を確認しやすいという視点が必要です。

製薬会社の“常識”は、医療提供者の“常識”ではありません。