「少年H」観て来ました。 | Bohemian78-ambのブログ

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8/12に話題の「少年H」を有楽町のTOHOシネマで観て来ました。
昼という時間帯もあってか客席を埋めたのは私より年配のシニアの夫婦が多かった。


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蘭さんの演技を楽しむ気持ちが強かったが、映画が始まると作品自体のテーマにどんどん引き込まれていく。

戦時中の話は母からよく聞いていた。母は女学校の時に九州で勤労動員に駆り出され軍需工場で働かされたそうだ。(パラシュートの折りたたみ作業など)
戦時下での憲兵の市民に対する理不尽な弾圧行為の話に及ぶといつも声が大きくなった。「戦後、あいつら探し出して仕返ししてやろうとみんな思ってた。」 当時の屈辱的な恨みは今でも消えてないのだろう。スクリーンではまさにその世界が展開されていた。


少年Hの父になりきった水谷豊さんの演技は彼しか演じられないと思うくらい見事だった。仕立て職人として、自分の仕事に誇りを持ち他人には誠実と思いやりで接する。そんな人柄を自然体に演じるその存在感に感銘を受けた。

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戦時統制が厳しくなるなか、息子に正しい考えを語りつつもそれを振りかざす事をたしなめ家族と共に生き抜こうとする。空襲で焼け野原になった廃墟の中に某然と立ち尽くす父。怒り、悔しさや虚しさが入り混じった表情は日本映画史に残る名シーンだと思う。


敗戦後の闇市のシーン。軍事教練で自分を散々痛めつけた鬼教官が人が変わったように民主主義に順応している。それを見て愕然とする妹尾少年。納得がいかない彼の怒りの問いに父は答える力もなく放心状態の日々が続く。

そして蘭さん!
夫が焼け落ちたミシンを修理し再び仮設住宅で洋品店を小さく再開。
夫の作った素敵な洋服に袖を通した蘭さんの
「ありがとう。」
の一言、そして笑顔がもう素敵すぎて自然と涙が出た。


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ミシンは空襲で炎上する我が家の2階から息子と妻が外に運び下ろし、父が焼け跡から拾い上げて修理したもの。困難を乗り越えて信念を持って生き抜くというこの映画の象徴だった様に思える。


それから妹の好子役の花田優里音ちゃんが実にいいのだ!
甘えん坊だけど礼儀正しいお嬢ちゃん。おかっぱで目がクリっとした愛くるしい表情にミキちゃんの幼小の頃の様な想いを重ねたのは私だけだろうか。


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あまり書くとネタバレになるのでこのへんで。



ところでこの映画を通して、ふと稲盛和夫さんの「人生の王道」という本の以下の下りを思い出した。


「かつて日本の社会のいたるところに、上質な人間がいました。
たとえ経済的に豊かではなくても高邁に振る舞い、上に媚びず下には謙虚に接し、自己主張することもなく、他に善かれかしと思いやる---そんな美徳をもった日本人がたくさんいました。
また、そのような人々によって構成された集団も、自ら高い品格を備えていました。
中略
ところが近年、世の中を見渡せば、以前にはとても考えられなかったような、ひどい出来事が続いています。
中略
今こそ、日本人一人ひとりが、精神的豊かさ、つまり美しく上質な心をいかにして取り戻すかを考えなければなりません。年齢を問わず、すべての日本人が改めてその品格、品性を高めることが出来れば、日本は世界に誇る上質な国民が住む国として、再び胸を張れるようになるはずです。私は、それこそが、真の日本再生であると考えています。」 
~稲盛和夫著 「人生の王道」より抜粋~



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蘭さん すばらしい作品をありがとう。
最後はすがすがしい気持ちで映画館を出ました。