しばらくして

  特命にて

亀山『右京さん、一人怪しい人物がいましたよ。名前は近藤はるか(48)松本の生まれで、大学は理系、そしてブラックリストに記載されているのはこの女だけです』

右京『そうですか、こちらでもわかりました』

亀山『3人目の女ですか?』

右京『おそらくそうでしょう。都内の金券ショップに問い合わせてみました。旅行券やら商品券を大量に売りに来た人物がいたかどうかをです。数名いましたが免許証以外で身元を確認したのが2件、そのどちらの名前も河本香織という女性のものでした』

亀山『でも、犯人なら自分のは使うわけないっすよね』

右京『もちろんそうです。本人に問い合わせたところ、昨日保険証が無くなっていることに気付いたようです、そして河本さんの掛かり付けの病院が福田総合病院でした』

亀山『じゃあ病院関係者が保険証を悪用したんですか?』

右京『調べたところ河本さんの通う内科では看護師3人、医師が2人です。そして、そのうちこのカード会社を利用していたのは一人だけでした。名前は井上芳子30)です』

亀山『これで3人が分かりましたね』

右京『しかし、証拠はありません、殺人事件との関わりも憶測にすぎませんからね~』

  その時、角田課長があわれる

角田『おいおい、ニュース見てみろ、徳井祥子が遺体で見つかったそうだ』

亀山『え?なんでまた…』

右京『松本市で亡くなったようですね、地元に帰って何をしていたのでしょうね~』

亀山『とにかく残りの二人を見つけたほうがよさそうですね』

右京『ええ』

  

 鑑識にて


米沢『松本の鑑識に問い合わせたところ後頭部を強打されての頭がい骨骨折でほぼ即死だそうです。遺体はビルからの投げ落とされて自殺に偽装されていましたが間違いなく他殺だそうです』

右京『そうでしたか。ところで例の指紋はどうなりましたか?』

米沢『バッチリ一致いたしました。レシートに残された指紋はカード会社の書類に残された近藤はるかの指紋と同じでした』

亀山『じゃあ少なくとも近藤はるかと徳井祥子は面識があったわけですね』

右京『そのようですね~』

  

 そのころ捜査一課では


内村『なんだと?松本の事件と関係があるのか?』

伊丹『偶然にしては出来すぎています』

中園『じゃあ被疑者は誰なんだ』

芹沢『近藤はるかという女です』

内村『何者だ?』

伊丹『カード会社のブラックリストに載っている人物で、徳井祥子と同じ故郷です』

中園『よく調べたじゃないか』

内村『おおかた杉下だろ、奴でなければこうすぐにはわからんだろうからな』

伊丹『…と、とにかく近藤はるかの家宅捜索令状をお願いします』

内村『バカモノ!それだけの証拠で令状なんて取れるわけないだろ』

伊丹『しかし…』

中園『部長のおっしゃる通りだ、確たる証拠を見つけ出すんだ』

芹沢『せめて合同捜査本部にしてください、県警は協力的とは言えませんよ、ねー先輩』

伊丹『ああ、今の段階では自供を得るしかありませんよ』

内村『そんな真似できるか、県警に協力は要請するが絶対に合同捜査などにはしない。逆に向こうの事件も解決したらどうだ』

伊丹『そんな無茶な!』

中園『とにかく証拠だ!』

  

 外に出る伊丹ら


伊丹『ったくどうすりゃいいんだよ』

芹沢『杉下警部の出方を待ちましょうか、そのほうが早そうですよ』

芹沢の頭をたたく伊丹『プライドを持て、ばか』

芹沢『痛いな~、僕に当たることないじゃないですか~』

  

 その後、福田総合病院にて


右京『井上芳子さんはいらっしゃいますか?』

受付『彼女なら今日は早退しましたよ』

亀山『具合悪いんですか?』

受付『さあ、最近多いんですよ。噂では男と会ってるって』

右京『男ですか』

受付『あくまで噂ですよ~患者さんが若い男と歩いてた彼女を見たって言ってたんですよ』

亀山『住所教えてもらえます?』

  井上芳子の自宅前にて、若い男と井上は車の中から出てきた


井上『待って、今持ってくるから』

男『うん』

  井上が紙袋を持って車に近づいてきた、次の瞬間、紙袋を奪い若い男は逃走してしまった


井上『…ちょっと!』

  そこに右京が現れる


右京『今のが奪い取ったお金ですか』

井上『なによあんた!』

右京『申し遅れました、警視庁特命係の杉下と申します』

井上『…何も知らないわよ』

右京『このままお金を取られたままでよろしいのですか?彼だけがおいしい思いをしてしましますよ』

井上『知らないって言ってるでしょ、彼は悪くないわよ、何か手違いが起こっただけよ』

右京『よろしい、では彼の家に行って事情を聞きましょうか』

井上『彼の家なんて知らないわよ…』

右京『おやおや、困りましたね~』

  そのとき右京の携帯に亀山から連絡が入る、若い男の身元が割れたようだった


井上『彼はここに住んでたの…』

亀山『ああ、しかも奥さんと子供までいるんだぞ、あんたそれでもあいつをかばうのか?』

井上『…』

  亀山が男を呼び出す


若い男『なんだよあんたら、俺が何したっていうんだよ』

井上『ねえ、嘘よね?私と結婚してくれるのよね?』

亀山『はっきりしろよ、お前』

若い男『ったく面倒くせーな、誰がおばさん相手に本気になると思ってんだよ、ただの(ホストの)仕事だ、勘違いしてんじゃねーよ』

井上『…っそんな…』

右京『あなたに人を非難する権利などありませんよ!もし胸を張って仕事だというのならば、お金をすぐに返しなさい!』

男『…』

亀山『じゃないと、今度は警察が黙ってないからな!』

 その後


井上『ごめんなさい…私がばかだったみたい…いい年して…恥ずかしい』

右京『人間ですから躓くことはあります、しかしそこから立ち上がろうとしないことが一番恥ずかしいのですよ』

井上『…お金は返します』

亀山『詐欺事件を認めるんだな?』

井上『すいませんでした』

亀山『それで、箕輪と徳井祥子を殺したのもあんたなのかよ』

井上『違います!箕輪を殺したのは祥子さんです…カード読み取り機に仕掛けたトリックを見破られて箕輪に脅された時、彼女ともみ合っているうちに彼が足を滑らせて…』

亀山『なんですぐに自首しなかったんですか』

井上『祥子さんが…私たちも共犯だから同罪だと逆に脅してきたんです』

右京『なるほど、では近藤さんもその場にいらしたのですね』

井上『なんで…私は誰にも言ってないのに何で知ってるんです?』

亀山『ダルマですよ、あれから3人に行きついたんですよ』

井上『祥子さんが何で死んだのかは分かりません…でもはるかさんに祥子さんの家に行ってもらったのは確かです…』

右京『おそらく、奪い取ったお金のほとんどを徳井さんが独占してしまったのでしょう、奪われた金額はあなたの貢いでいた金額の数十倍ですからね』

井上『ええ、もうお金でしか彼の心をとどめておくことができなかったのに…そのお金が無くなった上に…あんなことまでしたのにお金をもらえなったんです…』

右京『そこで近藤さんが徳井さんに会いに行ったのですか』

井上『ええ』



  近藤はるかの住むアパートにて


電話をする近藤『あっ兄さん、(娘の)葉子の進学資金の目途がつきましたよ。入学金には十分な額がそろったわ』


  そこに右京らが現れる


右京『近藤さん、このままでよろしいのですか?』

近藤『なによ…あななたち』

亀山『人を犠牲にしてまで入学金を工面する意味あるんですか』

近藤『…言いがかりよ』

右京『では、カード会社のブラックリストに名を連ねているあなたが何故そんなお金を持っているのです?』

近藤『…』

亀山『リストに載っていたからオークションに参加できずに51人目の女として紛れ込んだんでしょ?』

近藤『私はあきらめないわよ、あの子を入学させるまでは絶対に!』

右京『殺人事件に関してはこちらとしても確たる証拠があるわけではありません』

亀山『え?ちょっと右京さん?』

右京『しかし、証拠は必ず見つけます。もしも入学後に事件が明るみに出れば一番苦しむのは葉子さんだと思いますよ』

近藤『…』

亀山『いいのかよ、子供の将来を心配するのが親の仕事だろ!』

右京『あなたは、このまま逮捕におびえる生活を葉子さんと一緒にすごさなければならないのですよ』

近藤『…仕方ないじゃない、あんたらに私の気持ちなんてわからないわよ』

右京『ええ、もちろん僕らには到底理解できるものだとは思いません、しかし葉子さんは別です。おそらくあなたが犯罪に手を染める経緯をすべてご存じのはずですよ』

亀山『もう彼女を苦しませんなよ』

  そこにおじさんに引き取られていた葉子が戻ってきていた


葉子『お母さん…私負けないから、お母さんも負けないでね』

近藤『…ごめんなさい…殺すつもりなんてなかったけど…祥子が初めから私たちを利用するだけ利用して海外に逃亡しようとしてたのを知って我慢できませんでした…最初はお金持ちからちょっとお金をいただく程度のことだったのに何でこんなことに…』

右京『罪の大小はあっても、犯罪は犯罪ですよ、何故もっと早く気付けなかったのですか』


  特命にて


角田『それで、借金の原因はパチンコ依存症だってな』

亀山『ええ、旦那が死んだときに始めたパチンコがすべての始まりだったみたいっすよ』

角田『まったく怖いね~依存症ってやつは』

右京『ええ、そうなってしまっては前後の見境も、事の善悪も無くなり依存の対象にのめり込んでいくそうです』

亀山『俺らは特になくてよかったすね』

角田『いや、亀ちゃんはコーヒー依存症だろ、そんであんたは紅茶依存症だろ』

亀山『そういう課長は特命依存症じゃないんですか~?』

右京『ちなみに僕のは依存症ではありませんよ、多少中毒気味なだけですから』

角田『どっちだって同じだよ、ためしに一週間紅茶抜いてみなよ』

亀山『面白そうっすね、途端にいらいらし始めたりしてね』

右京『結構、やってみましょうか、この一杯を最後にして』

亀山『って言ってるそばからもう飲んじゃったよこの人は』

 終り~