バーでビールを飲んだ後、宿に戻る。ドミトリーの男性部屋だ。2段ベッドがいくつもある。俺は2段ベッドの上の段だ。
まだ夜の11時前だから、この手の宿ではそれほど遅い時間とも言えない。
俺は洗面などのために、ベッドの横にあるロッカーを開け閉めする。鍵は常に持ち歩いている暗証番号で開ける南京錠だ。
それほど大きな音を出しているわけでもないのに、俺のベッドの下で寝ている20代と思われる白人の男が、舌打ちして俺の方を睨みつける。とても感じの悪い奴だ。俺が2段ベッドの上に登るときにも、物音を立てないように慎重に行動しているにもかかわらず、何かぶつぶつと文句を言っている。
ベッドがまたとても小さい。慎重が1メートル78センチの俺でも、縦の長さが結構狭く感じられる。横幅に至ってはとても寝返りを打てるような広さではない。しかもかなり古いので、ちょっと体を動かしただけでベッドのきしむ音がする。
不幸はこれだけでは終わらなかった。ベッドに横になってから30分もしないうちに体じゅうがかゆくなってきた。ダニだ。
安宿のためクーラーも効いてないので、じめじめしてムッとするし、とてもじゃないが熟睡できる環境ではない。しかも下のベッドでは神経質な白人が、敵意をむき出しにしているので、へたにベッドを降りるわけにもいかない。
結局ほとんどまともに睡眠を取ることもできず、一晩中体をかきむしっているうちに朝がやって来た。もう一泊するのに、あいにく午前中からシュノーケリングツアーがはいっているので、ベッドを替えてもらうタイミングも逃してしまう。