日本人のカップルは炊き上がったご飯で、丸いテニスボールぐらいの大きさのおにぎりを何個か作った。俺とK君にもおすそ分けしてくれた。
スーパーで買ってきたワインを一緒に飲まないかとカップルを誘った。ラウンジで4人でユースホステルのグラスにワインを注いで乾杯した。女性はあまりお酒は飲めないみたいで、少しだけ飲んで部屋に戻った。
男性は半年ぐらい前まで、タイのプーケットでスキューバダイビングのインストラクターをしていたらしい。俺達も3ヶ月ぐらい前にプーケットに遊びに行ったばかりだったので、ワインを飲みながら話が盛り上がってきた。
ダイビングのライセンスはタイのタオ島というところで取ったという。何しろここはタイの中でも格安でライセンスが取れるらしく、世界の中でもかなり安いのではないかと教えてくれる。俺とK君はプーケット旅行のときに、ピピ島に行って体験ダイビングをエンジョイしたので、彼のこの話に強く興味を持った。
そして彼がプーケットにいた頃に休暇を取って、タイ周辺の国に何度か遊びに行った話をしてくれた。その話の流れで彼はラオスをやたら押してくるのだ。
当時、経済の発展がめざましく、世界の注目を浴び始めていたベトナムも、人間のエネルギーが充満していて刺激的な面白さがあり、彼の印象に残っているらしい。それと正反対に、周辺の国々の発展から取り残されていて、人間の素朴さや手付かずの大自然が残っているラオスという国が彼の心に強烈なインパクトを与え、すっかりその魅力に取り付かれてしまったらしい。
俺達の旅のシナリオにラオスという国は含まれていなかった。日本で計画をしている段階では、多少なりとも知識や興味がある国に行こうというのが、俺とK君が訪問国を決める際のルールだったのだから。ラオスという国に関して、俺が知っていた唯一の情報と言えば、首都がヴィエンチャンということだけだった。
しかし今こうしてサンディエゴのユースホステルで、一人の日本人男性がラオスという国の魅力について熱く語る姿を見ていると、ラオスに行くのが俺達の運命のように思えてきた。