第3曲目【温室にて】

„「トリスタンとイゾルデ」のための習作“と副題が付いているように、オペラの第3幕の前奏曲に転用されている。どちらの作品でも印象的な冒頭のテーマは、憂いを帯びた諦め、祝福を受けることのない、決して公開することのできない、しかし一方で、運命的で逃れられない情愛の深さを想像させる。




以下、日本語訳。

高く弧を描いた葉が冠のように伸びている
子どもたちよ、遠く離れたところから来た、どうしめ嘆いているのか教えておくれ。

お前たちは黙し、頭をもたげ、空に印を描く
そして無言の証に 甘い香りが立ち上ってゆく

遠く 欲求の憧れに、お前たちは両腕を広げる
しかし錯覚に取り憑かれ、惨めな空しさは恐怖へ向かわない

私は知っているぞ、哀れな植物よ、一つの運命を分かち合おう
光と輝きが周囲を取り囲んでも、我々の故郷はここには無いのだ

そして太陽が陽気に光射し 無意味な日中のように
真に嘆くものは 沈黙の暗闇に包み込まれる

辺りは静かになり、かすかに動くものがあるのみ、暗い空間を不安そうに満たす
重たいしずくが 緑の葉の縁を這って落ちる

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第4曲目【痛み】
冒頭、唐突に現れる強いフォルテのピアノの和音は、タイトルそのもののよう。またオーケストラを想像させる壮大な和声。短い曲ながらも、”痛み”というものに対して感動し、感謝まで伝えている劇的な曲である。

以下、日本語訳。

太陽よ、毎夕お前は美しい目を赤くして泣く
海面の鏡がお前に早い死を訪れさせるとき

しかし古さの中に壮麗さが、うす暗い世界の栄光が昇る
朝には再び立ち上がるのだ、誇り高き英雄のように

ああ、私はどれほどに嘆けば良いのだ、いかに私の心は君を見るのが辛く
太陽は意気消沈し、そして沈まなければいけないというのに

そして死のみが生を生み、痛みのみが恍惚を与えてくれる、
なんという感謝であろうか、このような痛みを与えてくれた 自然よ!

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第5曲目【夢】
オペラ「トリスタンとイゾルデ」第2幕の「愛の二重唱」に転用されている。イゾルデ(ソプラノ)は、自分とトリスタン(テノール)のために、侍女ブランゲーネに毒薬を用意するよう命じる。…しかしブランゲーネが選んだのは、惚れ薬であった。抑えていた互いへの情熱が一度に燃え上がり、運命的な結びつきと愛の交換が歌われるシーンである。叶えられることのない夢の世界に憧れ、ロマンティシズムが強く香り立っ作品である。歌曲の詩の最後部分、in die Gruft…(墓穴へ)は、トリスタンとイゾルデの2人の結末とも思わせる。

以下、日本語訳。

教えておくれ、なんという素晴らしい夢が私の心を包み込んでいるのか
それは空虚な泡のようなものではなく、虚無が過ぎ去ったのか?

夢!毎時、毎日、美しく花咲き
君たちの天体と共に幸福に心地良さを導くもの

夢!魂の中の高き光が沈んでいくように
そこに永遠の絵を描く

全ての忘却! 想起! 夢!

春の太陽が雪の隙間から出てきた花々に接吻するように
予期していなかった喜びが新しい日に挨拶する

それは成長し続け、花開き、
夢見心地に香りを授ける

やさしく君の胸の中で燃え尽き
そしていつか沈み込む、墓穴の中へ…