引き続いて、シェーンベルク:【4つの歌 op.2】(Schönberg【 Vier Lieder op.2 】)

の概要と、日本語対訳を書いていきます。

興味を持たれた方は、youtubeにもたくさん動画が上がってるので是非聴いてみてください。


第1曲【期待】
前奏が無く唐突に歌が始まる。半拍遅れてすぐにピアノの和音も追従する。ピアノの2つの和音をの間を縫うように歌の旋律は半音の進行、続いてピアノがかくも美しい合いの手で次の和声と歌の旋律を導く。この冒頭2小節のみで、テキストの絵画のような全体印象をたち表している。
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海緑色の沼の
赤い邸宅のそば
枯れたオークの木の下
月が輝いている

水の中の
暗い影のあるところ
男がひとり立って
手から指輪を外す

3つのオパールがキラキラと
青白い石に
赤と緑の色を漂わせ
投げかけ ついには沈んでゆく

彼はそれらに口づけをしたとき
目が光り
まるで海緑色の土のように
そして扉が開く

枯れたオークの木の近くの
赤い邸宅から
青白い女の手が招く

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(エゴン・シーレ: 晩秋の小さな木)



第2曲【あなたの金色の櫛を与えてください】

第1曲目と同様、半音階進行が多用されている。大きく異なるのは、先ほどが静の曲だったのに対して、大きなうねりを伴う動の曲。神聖で触れにくい対象であったマリア様に対して非常に生々しくエロティックに表現した原詩は、当時はよほど物議を醸したと想像する。興奮の沸点へすぐに到達するように、音楽も躍動する。最後の「マグダレーナ?」は、恍惚の中に身を委ねてるよう。ちなみに、詩の原題は「イエスの物乞い」。
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あなたの金色の櫛を与えてください
それは毎朝想起させるのです
あなたが私の髪に口づけすることを
あなたの絹のスポンジを与えてください
毎晩予感したいのです
あなたが浴槽の中で誰のために身支度を整えるよか
おお!マリア様!

あなたの持つ全てを私にください
私の心は決して自惚れてはなく
誇りをもってあなたの祝福を受けたいのです
そしてあなたの最も重い荷をください
私の頭上にあなたの心を預ける気はありませんか?
マグダレーナ?

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第3曲【高揚】
題名の通り、最初の一音から、最後の和音まで一度に駆け抜ける印象の曲である。ピアノが主導権を握ってると言っても良いほど、スピード感を持ってスケールの大きい音楽へ昇華する。
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あなたの手をよこしておくれ
せめて指だけでも
そこに僕は全世界を見るんだ
私のものになったかのように

おお、なんと美しく咲き誇る私の地
ただ私を見つめて
君と雲の隙間を超えて
太陽まで到達するんだ
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第4曲【森の日差し】
この第4曲のみシュラーフの詩で、少し牧歌的な印象。しかし16部音符と三連符を使い分け、先ほどの曲と同様、高揚感を感じる。全体を通しては、木漏れ日が優しく差し込む中の幸福で甘美な時が想像される。
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茶色のザワザワとした夜に
光が射し込む
金緑色の光が

花や草はいきいきと
森の小川は歌い 飛び跳ねる
そして思い出も

とっくの昔に弱まったものが
再び金色に
すべて喜びの歌に

そして君の金色に輝く髪を見つめ
君の金色に輝く目を見つめ
緑のささやく夜に

そして僕は芝生の上 君の傍に横たわる
そしてまたキラキラした精霊シュリンクスを聴く
青い天の空気の中に吹いている

茶色の 動めく夜に
光が射し込む
金色の光が
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