先週(5月21〜24日)、ザルツブルグ聖霊降臨祭音楽祭が行われました。
“聖霊降臨!!?“、日本語で聞くとちょっと身構えてしまうかもしれませんが、これはキリスト教の大事な祝祭日の一つで、毎年この祝祭日に合わせて短い音楽祭が開催させています。現在の音楽監督はメゾソプラノのチェチーリア・バルトリさん。彼女がプログラムを考案し、バロック音楽やバロックオペラ、イタリアオペラなどを楽しむことができます。

私は、モーツァルトのオペラ「皇帝ティートの慈悲」(今回はコンサート形式で)に合唱の一員として参加させて頂きました。


練習から本番まで、いつもと勝手の違うことがいっぱいでした。PCR検査や抗原テストはもちろんのこと、劇場内での行動範囲を出来るだけ最小限に抑えたり、歌うとき以外はマスク着用、お客様もマスク着用で間隔を開けて着席、演奏内容は一部カットして2時間ちょうどの休憩なしでぶっ通し、、、いつも以上に緊張感のある現場でした。


いつもと違う状況、
でも、演奏家達は、
いつもと変わらない演奏
を舞台の上でしていました。

全ソリストの方々の演奏が素晴らしく、
セスト役を歌われたチェチーリア・バルトリさん、信じられないくらい繊細なピアノ(小さな音)と息の長いフレーズ(息継ぎをせずに歌う一節)を聴かせてくれました!!
私が自分の頭の中で勝手に、
「いやいや、こんなことは人間の声にはでけへんことや。無理無理!」と決めつけてしまってることを、バルトリさんはひょいっと超えてしまう。まだ誰も経験したことのない美しさや儚さがあるかのように、、ご自身の理想をまだまだ探求されてるようでした。


そしてこの日、この瞬間だけの凝縮されたエネルギーはお客様が居てこそ生み出されたんだと確信できます。もちろん、世界トップレベルの演奏家達ですから、ライブストリーミングや録音であっても高水準の演奏を彼らはするでしょう。でもお客様が会場に居ると、演奏者がお客様へ出すエネルギー、そしてお客様が演奏家へ向けるエネルギー、このエネルギーの交換が相まってこそ演奏会が成立するんだと実感しました。

昔に歌の恩師が、「お客さんの前で歌うってことは大事やで。自分を成長させてもらえるんやで。」と仰っていたのを思い出しました。


ソリスト、オーケストラ、合唱、それぞれが自分達の役割をしっかりと果たし、少しの無駄な隙間もない凝縮した2 時間を作り上げることができました。

最後の音が鳴り終わった後の大喝采とスタンディングオベーションが、その日の夜会場に居た全ての人々がどれだけ生の音楽、生き生きとした音楽を待ち望んでいたかがわかりました。



いつもと違う状況であっても、
ただただいつもと同じことをする、
そして
自分の仕事をする、

すごく大切なことかもしれません。


オーストリアは先週からロックダウンが解除され、いずれかの条件(抗原テスト、抗体保持者、ワクチン接種)をクリアすれば、コンサートに行ったりレストランに行ったり…etcいろんなことができるようになりました。長い冬と春を超え、夏はもうすぐそこまで来ています!