助手席の意味
よっぱらいに似合う季節は
春 だとおもう。
東京の中に住んでいたころ、真夜中に屋上に上がって
よくビールをのんだ。ついでに踊ったり、小声で歌ったりも。
ちかくには、ライトや電気の消え去った、ドームやサンシャインがあった。
だけど、気持ちは黒のフォードを待っていた。
私はそこで、自由と孤独は背中合わせだと知った。
助手席に乗れる意味も。
もちろん自分ではどうしようもできない恋がある、ことも。
今、この瞬間も、大黒ビル202のあの部屋、窓際には
あの頃の私たちがひざをたててしあわせに並んでる。
夢からさめて
あれ、この感じ…どっかにおいやっていたけど、
懐かしいこの感じ。
まだ夢のなかの空気が漂っています。
あの年の夏のはじまりには、2人でいると
いけないことをしているような気がして興奮した。
まるで沼に埋もれていくみたいだった。
思うことも、することも、ぴったり寄り添わないことがなかった。
酔っ払えば、ふたりでひとりだった。
くるしい別れ方をして、なかったことにしたけど、
身体はちゃんと覚えていたんだなあ。
あの人にだけ反応する種類の、胸の震え。
2002年の夏に私たちの周りに漂っていた、空気のにおいさえも
夢のなかではおそるべき正確さで再現されていました。
ああいう恋愛ができたのは、
わたし、あの年、あの人も、あの若さ、
ほんの短い季節を逃さず捉えて、恋をしたからだ。
あんな恋愛も…やんないよりやっといてよかったわ!
どんなことも、やがてすべからく、還っていく。
そして私の心のなかだけにしあわせに残る。

