術前にできることについて、前回は感染症予防について述べた。

 

続いて、

②しっかり食べて動いて筋力・体力をつける

について書く。

 

71歳当時の父は、身長172.5cm、体重65.2kgと平均的な体形であった。

塞栓術前にリハビリのスタッフに行ってもらった体組成評価で、

骨格筋量が26.1kgとやや低め

体脂肪量が17.2kgとやや多め

…と指摘され、もっと体力・筋力をつけておくよう指導された。

 

そして、医師からも、門脈塞栓後の対償性肥大待期期間に、たくさん歩いて体力をつけることと、アミノエールゼリー ロイシン40(味の素)ヤクルト400を毎日摂取するよう言われた。

 

味の素HPより

アミノエールは、簡単に言えば筋力を合成するのに必要な栄養分のとれるゼリーである。

ヤクルトはご存知の通り、腸内環境を整えてくれる。

 

父は言われたことはしっかり守るタイプであり、待機中~術後も毎日飲んでいた。(術後1年経った今はヤクルト400だけ継続)

 

そして、それ以外に私が調べて、医師に確認の上、父に毎日飲ませていたものが、Nesltleのインパクトである。

Nestle HPより

これは、たんぱく質やアルギニンなどを効率的に摂取するための栄養機能食品である。

父に摂取させた目的としては、

➀低たんぱく気味(血中TP6.0g/dl)だった父の栄養補給

②周手術期の免疫栄養の考え方(感染症予防の観点より)

の二つがあった。

 

②の免疫栄養に関しては、下記論文にあるように、まだハッキリとしたエビデンス(根拠)はとれていない。

_pdf (jst.go.jp)

しかし、下記HPに説明されているように、術後合併症(感染症)に有用だとのデータもある。

術前術後のimmunonutrition(免疫栄養)はなぜ行われるの? | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)

他にも論文を色々読んだが、疾患によっては摂取した方がデータが悪いとも書いてあった。

 

主治医の許可をもらった上で、我が家は行った。しかし、エビデンスがはっきりしない以上、自己責任の範囲で行うものである。

 

塞栓術後、父は毎日ヤクルトアミノエールゼリーインパクトを飲み続けた。

塞栓術の際に胆管内に留置してきた胆管チューブがズレて、鼻管へ変更になってからは、胆汁の飲用も始まった。内服薬はなかったが、これらの栄養剤と胆汁だけでお腹いっぱいになりそうだ。しかし、父は弱音を吐くことなく(胆汁はまずいといったが飲むのをやめたいとは最後まで言わずに)、頑張った。

 

自分ができることはやる、という信念がそこにはあった。

私だったら、胆汁はとても飲めそうにない。父を尊敬している。

 

そして、手術目的で入院したときの体組成評価で、

体重 65.2kg → 64.6kg (-0.6kg)

骨格筋量 26.1kg → 26.7kg (+0.6kg)

体脂肪量 17.2kg → 15.9kg (-1.3kg)

と、約2か月で体脂肪率を26.3%から24.6%へと少し絞れた。

 

患者仲間の中には、メタボからスリムへと大幅に減量に成功した人もいたが、普段食生活に気を遣うこともなく運動などもしない父が、2か月頑張れたのは本人の努力の結果ではないかと思っている。

 

そして、術後1年経つ今も、毎日の散歩を欠かさず行っており、術前に及ばないが体力は回復してきている。