いつものスーパーの前に、ベンチがある。

その日、そこに一人のオジサンが座っていた。


■ストロング缶と、うまい棒10円

手には、500mlのストロング缶。

そして、つまみは――うまい棒。

値段にして、たった10円。

それだけ。


■悲しそうな横顔

そのオジサンは、ずっと俯いていた。

表情は見えにくいけど、なんとなく分かる。

楽しそうではない。

むしろ、これから始まるゴールデンウィークすら、
関係ないような顔をしていた。


■なぜか、自分と重なった

知らない人のはずなのに、
なぜか目が離せなかった。

理由はたぶんシンプルで、
少しだけ自分と重なったからだと思う。

無職になってから、
自分も明らかに飲酒量が増えた。

ストロングは飲まないけど、
「なんとなく飲む」という日が増えた。

あのオジサンも、そうなのかもしれないと思った。


■あの場所に、自分が座る可能性

少しだけ想像した。

あのベンチに、自分が座っている姿。

ストロング缶を持って、
何も考えずに時間を潰している自分。

ありえない話ではない。

むしろ、紙一重だと思った。


■鍼に行くと、なぜか気分が上がる

いつもの鍼に行った。

不思議なもので、鍼に行くと毎回少し気分が上がる。

理由はよく分からない。

・少しでもキレイになれたかもしれない期待
・痛みに耐えたことで得られる変な達成感

その両方なのかもしれない。


■そのままの勢いで、パスポートを取りに行った

帰り道、なぜか思った。

「パスポート、取ろう」と。

理由は特にない。

でも、そのまま役所に向かった。


■30年ぶりのパスポート取得

気づけば、30年ぶりだった。

手続きは、驚くほどあっさり終わった。

もっと面倒なものを想像していたけど、
拍子抜けするくらい簡単だった。


■なぜ、もっと早くやらなかったのか

終わったあと、少しだけ思った。

これ、無職になった時点でやっておけばよかったんじゃないかと。

時間はあった。

余裕もあったはずだ。

それでも、やらなかった。

人は、動くときは一瞬なのに、
動かないときはずっと動かない。


■ベンチのオジサンと、パスポート

まったく違う方向の話だと思う。

・ベンチでストロングを飲むオジサン
・勢いでパスポートを取りに行く自分

どちらも、今の現実の中にある。


■まとめ

アラフィフ、無職、独身、バツイチ。

スーパーの前で、少し未来の自分を見た気がした。

そのあとで、なぜかパスポートを取った。

意味があるのかは分からない。

でも、動いたことだけは事実として残る。

とりあえず今は――
あのベンチに座る前に、もう少しだけ動いてみようと思う。