ブラジルの文豪、ジョルジ・アマードの長編小説、「丁子と肉桂のガブリエラ」を読みました。
素晴らしかった!なんと幸せな読書体験!
$SALSITA

舞台はブラジル北東部の州、バイーアの州都サルバドールから少し南に下ったところにあるイリウスという小都市。荒々しい暴力とマチズムが支配した入植時代から、沸き起こったカカオブームを契機に開かれた商業都市として変貌していく街で、古い地方ボスとリオからやってきたやり手のビジネスマンとの対立、女性を隷属させるような古い価値観と自由な恋愛を好ましいとする進歩的な文化人との対立などを、いくつものエピソードを通して描いていて、それだけでもじゅうぶんに面白いのに、そこに、不毛な奥地から流れて来た美貌の料理女、ガブリエラが登場することによって、一気に物語が色めき、匂い立ちます。丁子(クローブ)の匂いを漂わせた肉桂(シナモン)色の肌のガブリエラが作り出す、バタパー、アカラジェ、ムケーカといったバイーアの色鮮やかで風味豊かな郷土料理の数々の描写、ガブリエラが子供たちと無心になって音楽に合わせて踊る場面の躍動感、古い慣習や世間の常識に縛られること無く純粋に本能のままに行動するガブリエラはいつの間にか周囲の人達の心を解き放ち、祝祭的な世界に導いて行く。
バイーアの偉大なる語り部、アマードによって紡ぎ出される色彩豊かなカーニバル的な世界、、、まさにこの小説は読むサンバ! ブラジルで空前のヒットを記録したというのも肯ける大傑作です!