愛をひっかけるための釘
中島らも
の
ハロー・グッドバイの
サヨナラにサヨナラを読んでいた。
空気が冷たく澄んで星の美しく季節のお話。
以下引用。
今見えている星・夜空は過去のもの。
わたしたちが
目にするものには
何ひとつとして
現在のものはない。すべて過去なのだ。
愛する人が笑っていても
無限分の一秒
過去の顔なのである。
人間の実相は刻々と変わっていく。
無限分の一秒前よりも無限分の一秒後には、
無限分の一だけ愛情が冷めているかもしれない。
だから肝心なのは、相手をいつでも腕の中に抱きしめていることだ。
ぴたりと寄り添って、完全に同じ瞬間を一緒に生きていくことだ。
二本の腕はそのためにあるのであって、決して遠くからサヨナラの手をふるためにあるのではない。
今日の夜は
空気が冷たい。
夜空は
分厚い雲に
覆われて
星たちの過去は
見えない。
切なくなるほど
雨粒が
延々と落ちてくる
そんな夜の一部分。
