gratitude - ありがとう

7月19日は、亡夫の命日だ。
亡夫が息を引き取った11年前から7月19日が特別な日になったわけだけど、
今年は19日がもうひとつの意味をもつことになった。

前にも言ったかもしれないけれど、私には人生で大きな意味をもつ出会いが2度ほどあった。
ひとつは亡夫にあったこと。もうひとつは今私が働いている会社に出会ったこと。

この会社に出会ったことから派生して、ありとあらゆるおもしろい(興味深い)ひと達に出会えた。次から次へと仕事を通して出会ったひと達は、人間としてとてもチャーミングなひと達ばかりで、一緒に仕事をしていても楽しいひと達ばかりだった。


そんな、いつまでも一緒にがんばっていきたかったひと達のひとりである、私をずっと導いてくれたり、後押ししてくれたり、となりにいてくれた直属の上司が7月19日で会社を去ってしまうことになった。上司とかそういう言葉では言及したくないけど。

そう告げられてからの私は、すっかりハートブロークンで、まるで別れを決めた恋人に見れんたらたらの置いてかれる側のふられ娘だった。

なんてたって、毎日歩く通勤路の景色すらも、色あせてしまったかのごとく感じられたのである。
症状はまったく失恋と一緒。なんだこの喪失感はと思えば思うほど、彼女の存在がこんなにも私の中で大きかったかと痛感して、涙がでるのだ。ちょっぴりさみしくて、ちょっぴりかなしい。だけど何が主要な涙の訳かっていったら、ありがとうという気持ちだ。

彼女が示してくれたもの、与えてくれたものを、私は余すことなく咀嚼して消化して自分のものにすることができたのか。それとも、あそこでもここでもとポロポロと取りこぼしばかりしてきちゃったのか。

空っぽ感だとか、喪失しちゃった感には自分でも驚いた。
自分が自覚していたよりずっと、彼女と一緒に仕事をしていることが大好きだったことに初めて気づいたからだ。

彼女からもらった『糧』を有効活用して、私もいつか、ひよっこから成長したい。

彼女が惜しみなく使ってくれた「ことば」に私は感謝したい。
彼女ほどことばを惜しむことなく、誰にでもきちんと説明をしてくれるひとはなかなかいそうでいない。私も、『ほれ、わかるじゃろ?』、『これくらいは分かって当然じゃろ?』『空気読めるよね?』的な横着はせずに、きちんと物事を相手に説明できるようなひとになりたいと思う。

いろ~んなことがあった。
でも、いつどんな時でも、彼女は、フラストレーションやいら立ちなんかを見せることなく、いつも元気に、いつも同じで、いつも真っ先にシャベルをもって荒野を誰よりも先に掘り始めてた。

彼女との体験を思うと、ヒトとヒトがつながったり、あるヒトが違うヒトに大きく影響したり、あるヒトから導かれたり、後押しされたり、そういうのって別に、フィジカルなヒトとヒトの間の距離とはあんまり関係ないんだなって、思ったね。

彼女は、太平洋の向こう側から、計り知れないインスピレーションを私にくれ続けたんだよ。


彼女が私の上司になった時、ありとあらゆるひとに言われたんだよね。
ラッキーだねって。

私もそう思った。でも彼女が辞めてしまうと知った時、自分がどれだけラッキーだったかを更に痛感して、あまりの幸運にも泣けてしまった。神様ありがとうって思った。

まだ失恋モードなもんで、一緒に奔走した日々を振り返ると、非常にキラキラしていて涙を誘う。気持ちをことばにしようとすると、しみったれたB級ラブレターっぽくなってしまうのね。


電話会議で誰かがすっとんきょうなことを言った時の彼女の優しいフォロー、
議論が白熱して、まるで口論のようになってしまった時の彼女のさりげない割り込み、
トレーニングの時の彼女の惜しみない丁寧な説明、
いつもそっとひとをフォローしてくれる彼女のメール、
華麗なる、会議進行のわざ、


皆が彼女を信頼してた。

彼女がみんなのアンカーみたいだった。
いつも誰かの頑張りを彼女はクチに出して褒めてた。
私にとっちゃ、太陽みたいな彼女だったけどそこまで言うと気持ち悪いでしょ。

例えば私のように自分の家族をもたないものにとっては、その分友達や同僚の存在の意味が大きくなる。尊敬できるひと達と働くということは、私にとってはとっても大事なことなのだ。
割り切って適当に仕事中だけつきあって、というわけにはいかぬ。

いつか私も、彼女が私を導いてくれたようなことを、他の人にオファーできるようなニンゲンになりたい。これからは、彼女という頼もしい相談相手がいなくなってしまった故、私ももっとしっかりしなくちゃだ。もっとしっかりした私をいつか彼女に見てほしい。


これからは、彼女と私は友達になって、これからもどんどんいろんな相談をしたいと思う(笑)
いつか私も彼女の相談にのれるようになりたい。

宝物ボックスに入れる時間を、彼女と一緒につくれたことに感謝。