la taverne de saint germain des pres - 最後のレストラン

夫と結婚するってんで、渡英したのが2000年1月。
夫が、私のエゲレス生活1周年と、結婚して(だいたい)1周年と、私の誕生日を祝うってんで、
私の誕生日に、サプライズパリ旅行を企画したのが、2001年1月。

イタリアンコートとブーツをギャラリーラファイエットで買って(もらって)、
イギリスじゃ手に入らなかった私の常備水コントレックスを買いだめし(その後ウェイとローズで買えると発覚)、
イギリスのまずい外食に辟易していた私は、ここぞとばかりにシーフードを大人食い。
わがままいっぱいの誕生日を過ごしたもんだ。わがままいっぱいといえばまだかわいげもあるけど、uglyといったらuglyだ。情けなくもある。

ユーロスターに乗ってロンドンの自宅に戻る前に、最後にサンジェルマンのレストランに入って食事をした。
思い出そうとすると、グラスに入ったワインと、ムール貝が頭にぼやっと出てくるので、
私はどのみち、ワインとムール貝あたりを注文したのかもしれない(ありがち)。

その時のレシートを(ビジネスカード兼レシートなのでかなり立派なつくり)私はまだ持ってる。ちなみに通貨はフランである。当たり前だけど。フラン紙幣には星の王子様が印刷されているのもあって、フランは素敵な紙幣だったな。

とくとレシートを見てみると、
(多分私が)、白ビールとボルドーを飲み、夫がアイリッシュのエールビールを注文したようだ(Kilkenny)。


多分どこかにしまい込んだのが、夫が亡くなってからでてきて、これが、末期がんの患者であることを知らずして、食べた最後の普通モードの外食なのかもしれぬと、多分捨てずにまたかたしこんだのかもしれない。

せっかく10年近く捨てずにもっていたと思うと余計に捨てづらくなるのだけど、
フランスに行く予定もなし。
破棄してしまう前に、名前くらいブログ上に置いておこうと思ってのエントリざます。

100%センチメンタルバリューに基づくもので、このレストランが特においしかったとか、素敵だったとかっていうエントリじゃないので申し訳ないんだけど。魚のスープと、シーフードグラタンを注文している。Clairesっていうのもレシートにあるけど、なんだろこれ?
で、しめて306フランで、参考としてユーロ価格が表示されてる(46.65フラン)レートは、6.55957。記憶なんていい加減なもんだ。ムール貝なんて食べてないぢゃないか。


。。。。時は流れて、、、、


時は流れて世の中は便利になった。
レシート上にあったレストランの名前をグーグルで検索したら、あったあったまだあった。
同じアドレス、同じ電話番号。

ああ、これだからヨーロッパは良い。

10年くらい経っちゃっててもあんまり物事が変わっていない。

La Taverne Saint Germain
155 boulevard Saint Germain, 75006 Paris (situer sur la carte)
01.42.22.88.98


http://www.resto-de-paris.com/taverne-saint-germain/restaurant/paris


おまけに、このレストランの情報ののっていたウェッブサイトで、フェイスブックのlike! (いいね!)をクリックまでできてしまう世の中になった。だからすかさずlike!をクリックしたけど(笑)

実はちゃんと覚えてて、あの時夫は超ウルトラ具合が悪かった。
ロマンチックなウィークエンドにこんなに頻繁にトイレに駆け込む夫はなんなんだと、気分を害していた私もいた。
ちょっと、またトイレに、、、という夫は、私がどうしてもロンドンに持ち帰りたいというコントレックスのペットボトルを何本も持たされていた。
楽しいウィークエンドが台無しじゃないのと思ってた私は、その日の帰りのユーロスターの中で夫が気味の悪い熱をだし、翌日から2度と仕事に戻れなくなるなんて思いもしなかった。思う訳がなかった。このレストランで食事をしていた時は、夫はただの、健常者の『下痢オトコ』だった。



あの最後の日曜日は、皮肉にも、サクレ・クール寺院 (Basilique du Sacré-Cœur) でのミサから始まったんだった。


あの晴れた冬の日曜日から、

La Taverne Saint Germainのおっちゃんはあれから何倍のビールをサーブし、
何本のワインのコルクをぬいたのじゃろか。

あの晴れた冬の日曜日から、

私は、阿鼻叫喚し、七転八倒し、右往左往し、七転び八起きし、起死回生した(?、これは怪しい)。

おっちゃんはこれからも、パリ市民の胃袋を満たし続けるだろうし、
私もこれからも、生きてく。


夫は依然として死んだままで、
亡くなってからというもの、一言も口をきいていない。