boyaki - ぼやき4 アムステルダムにて- amsterdam-
boyaki - ぼやき1 ワットフォード・ウェィ-Watford Way-、そしてboyaki - ぼやき2 ドックヤード-The Historic Dockyard-、はたまたboyaki - ぼやき3 ニッポンにてからの続きです。
何年か前にひとりで訪れた時、美しいと感じた中央駅の駅舎を、ジョンの手をひいて望む。
古くて重厚なヨーロッパの建物と、寒さに押しつぶされそうである。
こびりついたような歴史もうっとうしく思えるだけである。
安普請な使い捨ての毎日でいい。
おもしろおかしく、まともな医療を受けて暮らさせてやりたい。
見たことのないというものは何だって見せてやりたい。
だからアムステルダムに降り立った。
ホテルを選び、どこで夕食にしようかと私はジョンに訪ねるけれど、こんなことは、ジョンにとって楽しみではなく、苦痛な労働に近いということを降り立ってしまってから気がついた。
消え入るようにしか歩けないジョンといると、夜の街が怖くなる。酔っ払った誰かがジョンに当たってきたら、私がきっと助ける。「私がジョンを守り抜くのだ」という気持ちが増長する。
日が暮れてきて、だんだん雑誌も読めなくなってきた。
ジョンが寝続けるホテルの部屋にて。
結局どこにいても同じである。
私はこうして待ってる。
ジョンが眠り続けたり、手術を受けたり、苦しんだりするその傍らで、待ってるだけである。
そして、ジョンにとっても、結局どこにいても同じである。
どこにいても、苦痛や恐れから逃れられない。
アムステルダムを満喫しようと、窓の下の路地から若い旅行者の奇声が聞こえる。
ベッドに横たわるジョンをみる。ここが祖国だろうと、外国だろうと、もうそういうことに構う余裕はなさそうである。
もう少しだよ。もう少しでイギリスだよ。
帰ろうね。
boyaki - ぼやき1 ワットフォード・ウェィ-Watford Way-、そしてboyaki - ぼやき2 ドックヤード-The Historic Dockyard-、はたまたboyaki - ぼやき3 ニッポンにてからの続きです。
何年か前にひとりで訪れた時、美しいと感じた中央駅の駅舎を、ジョンの手をひいて望む。
古くて重厚なヨーロッパの建物と、寒さに押しつぶされそうである。
こびりついたような歴史もうっとうしく思えるだけである。
安普請な使い捨ての毎日でいい。
おもしろおかしく、まともな医療を受けて暮らさせてやりたい。
見たことのないというものは何だって見せてやりたい。
だからアムステルダムに降り立った。
ホテルを選び、どこで夕食にしようかと私はジョンに訪ねるけれど、こんなことは、ジョンにとって楽しみではなく、苦痛な労働に近いということを降り立ってしまってから気がついた。
消え入るようにしか歩けないジョンといると、夜の街が怖くなる。酔っ払った誰かがジョンに当たってきたら、私がきっと助ける。「私がジョンを守り抜くのだ」という気持ちが増長する。
日が暮れてきて、だんだん雑誌も読めなくなってきた。
ジョンが寝続けるホテルの部屋にて。
結局どこにいても同じである。
私はこうして待ってる。
ジョンが眠り続けたり、手術を受けたり、苦しんだりするその傍らで、待ってるだけである。
そして、ジョンにとっても、結局どこにいても同じである。
どこにいても、苦痛や恐れから逃れられない。
アムステルダムを満喫しようと、窓の下の路地から若い旅行者の奇声が聞こえる。
ベッドに横たわるジョンをみる。ここが祖国だろうと、外国だろうと、もうそういうことに構う余裕はなさそうである。
もう少しだよ。もう少しでイギリスだよ。
帰ろうね。