時は流れる- 私が英語と出会った理由-6
亡夫が闘病中の時、臨終の時は、センセイの言葉に励まされた。センセイは私にこういってくれた。『あなたにはwisdom(知恵)がある』。センセイにそういわれて私は自分にはまだ使える知恵が残っているように思う事ができた。夫が亡くなった時、センセイは我々の愛を祝福してくれた。センセイは一度も私に会いにイギリスに来た事などなかったけれど、センセイがそばで私が自分のありとあらゆる知恵を絞って生き延びた様子を近くで見守ってくれてたようにすら思える。きっとそれは世界のどこにいても私がセンセイに心を打ち明け続けてきたからだろう。
今でもときどき思い出した時、私はセンセイの編纂した辞書をもってベッドに行く。この辞書を読みながら寝るのがいちばんの安眠法なのだ。
センセイに会わなかったら、私は多分英語に特に興味も持たなかっただろう。高校から更に女子大に行こうなど、きっと思わなかったに違いない。高校を卒業できただけでも奇跡に十分近い。英語をセンセイの講義でベンキョウしなかったら、イギリスに行こうなどと思わなかっただろう。イギリスに行かなければ、イギリス人と結婚することも、イギリスで暮らすこともなかっただろう。イギリスにいなければ、今もボーイフレンドと出会い北京に引っ越してくることもなかっただろう。そう思うと、私のこの過去20年の始点はまさにセンセイだ。センセイとの出会いからすべてが派生していったといえるくらいだ。
海外で暮らすようになってからも、帰国すると必ずセンセイに逢い、一緒にお酒を飲んだ。
逢うたび、少しずつセンセイのお酒の量が減り、最近ではセンセイはきっと私につき合ってお酒を飲んでくれているだけなのだろう。私の方がよっぽどたくさん飲むようになった。私は遠慮しないでおいしいお酒をいつも飲ませてもらう。きっとこれからもね。
丁度3まわり違うセンセイはいつ逢っても相変わらず十分「かっこいい」。私が20年くらい前に『センセイかっこいい!』と騒いだ頃のままだ。そのかっこよさ維持にセンセイが果たして努力をしているのかしてないのかは知らないが。きっとセンセイが未亡人になるようなことがあったら私は再びセンセイに詰め寄るだろう、『センセイ、今度こそ結婚して』と(笑)。
お茶の水、四谷、銀座、吉祥寺、三鷹、神田、浅草、東京のそこここにセンセイと飲み、語った場所がある。
センセイは自分の中で個人的な時間設定があるみたいで、いつも突如として、『さあ行きましょう』といって席を立つ。センセイの持っているカバンはいつもずっしりと重かった。
つづく
亡夫が闘病中の時、臨終の時は、センセイの言葉に励まされた。センセイは私にこういってくれた。『あなたにはwisdom(知恵)がある』。センセイにそういわれて私は自分にはまだ使える知恵が残っているように思う事ができた。夫が亡くなった時、センセイは我々の愛を祝福してくれた。センセイは一度も私に会いにイギリスに来た事などなかったけれど、センセイがそばで私が自分のありとあらゆる知恵を絞って生き延びた様子を近くで見守ってくれてたようにすら思える。きっとそれは世界のどこにいても私がセンセイに心を打ち明け続けてきたからだろう。
今でもときどき思い出した時、私はセンセイの編纂した辞書をもってベッドに行く。この辞書を読みながら寝るのがいちばんの安眠法なのだ。
センセイに会わなかったら、私は多分英語に特に興味も持たなかっただろう。高校から更に女子大に行こうなど、きっと思わなかったに違いない。高校を卒業できただけでも奇跡に十分近い。英語をセンセイの講義でベンキョウしなかったら、イギリスに行こうなどと思わなかっただろう。イギリスに行かなければ、イギリス人と結婚することも、イギリスで暮らすこともなかっただろう。イギリスにいなければ、今もボーイフレンドと出会い北京に引っ越してくることもなかっただろう。そう思うと、私のこの過去20年の始点はまさにセンセイだ。センセイとの出会いからすべてが派生していったといえるくらいだ。
海外で暮らすようになってからも、帰国すると必ずセンセイに逢い、一緒にお酒を飲んだ。
逢うたび、少しずつセンセイのお酒の量が減り、最近ではセンセイはきっと私につき合ってお酒を飲んでくれているだけなのだろう。私の方がよっぽどたくさん飲むようになった。私は遠慮しないでおいしいお酒をいつも飲ませてもらう。きっとこれからもね。
丁度3まわり違うセンセイはいつ逢っても相変わらず十分「かっこいい」。私が20年くらい前に『センセイかっこいい!』と騒いだ頃のままだ。そのかっこよさ維持にセンセイが果たして努力をしているのかしてないのかは知らないが。きっとセンセイが未亡人になるようなことがあったら私は再びセンセイに詰め寄るだろう、『センセイ、今度こそ結婚して』と(笑)。
お茶の水、四谷、銀座、吉祥寺、三鷹、神田、浅草、東京のそこここにセンセイと飲み、語った場所がある。
センセイは自分の中で個人的な時間設定があるみたいで、いつも突如として、『さあ行きましょう』といって席を立つ。センセイの持っているカバンはいつもずっしりと重かった。
つづく