夜になると、父の背中は少し丸くなっていました。

父は自営業で、
商品を作り、配達もして、
一日中身体を使う仕事をしていました。

家には、

定期的に全盲のマッサージ師さんが来ていました。


それくらい、父の身体はいつも

疲れていたのだと思います。


よく父から頼まれて、

わたしは父の後ろに回って肩を揉みました。


テレビの音。

ポマードの匂い。

小さなわたしの手。


効くなあ。

上手だ。


そう言われるのが嬉しくて、


でもいつも、

割とサッサと、

「もういいよ。」

と、わたしが疲れるだろうと思って、途中で止められました。


あのときのわたしは、

喜んでもらえる瞬間、役に立てる瞬間が

ただ嬉しかったのです。


2025年11月に、95歳で旅立った父の思い出です。

83歳まで現役で働いた人でした。


亡くなる直前は毎日実家に通い、

今度は肩ではなく

足裏のマッサージをしました。

足裏に触れると少し表情がゆるんだので、何か少しでも

わたしにできることがあったことを、ありがたく思いました。



子供の頃のあの夜の父の肩から、

わたしの手は始まったのかもしれません。


つづきます。