「蜷川さんありがとうございました!」

 蜷川さんの告別式が終わりました。
沢山の人の中でお焼香の順番を待つ私は、娘さんで写真家の蜷川実花さんの撮った遺影を見て、稽古場にいるみたいだと思いました。

共演者と話した事があります。
稽古場の蜷川さんは、人が沢山居ても、誰もが同時に自分を見ている様に見える、と。
「写真みたいだね」と言ったのを思い出しました。
そんな、今にも何かを言い出しそうな表情。
素晴らしい遺影です。

本当に、魔王のような目で、アンサンブルの隅々まで良く見て下さってました。
最初の稽古では、「おまえは「下手」を許して生きて来たんだろ、ヘタを許すな!」と怒鳴られました。
あの言葉が無かったら今の私はありません。
その後、頑張って熟る様になると「よっ!奇人!‥‥奇人はウチでは褒め言葉だぞ?」と言われました(笑)
その時、ああ、やっと自分の居場所を見つけた!と思いました。

厳しいけれど、何故か、お茶目で優しい蜷川さんの姿を一番、思い出します。
イスラエルのホテルのバルコニーから雑誌を投げて、「読むかあ?」(Aeraでした笑)そして投げキスをし合った優しいお顔を思い出します。
最後の言葉は去年のオーチャードホール千秋楽で「ありがとうな!」でした。
いえいえ蜷川さん、こちらこそ、です!!
本当に本当にありがとうございました。
どうか熱い魂を鎮めてゆっくりお休み下さい。
その熱い魂は私達の中に 。
     エレオノーラ。