私は今、大学1年だ。
大学に入学し、半年が過ぎた。
この半年で、恋もしてきた。
でも、実際にしてきたのは
恋とかいうものじゃなくて、レンアイとかいう可愛いものでもなかった気がする。
この半年だけで、体の関係を持った相手が、3人いる。
一人は元カレだった。昨日全消去するまでは、このブログの話題の中心にいた人だ。
今となっては、最も遭遇したくない人、かもしれない。
落ち込んでいるときにあの男の姿を見ると、更に憂鬱になるのだ。
最近、付き合っているときにはほとんどなかった彼からのメールが多くなった。
私が飲みだと分かれば、「今日は大丈夫?」「ちゃんと帰れる?」
迎えに来て、自宅に連れ帰って、何をする気だろう、と思ってしまう。
それくらい、夜の生活は、私の為に尽くしているように見せかけてすべては自分本位の最低な人だった。
だが、彼のお陰で男性に対して強くなったのも事実だ。そこは感謝すべきかもしれない。
私のなんでも許してしまう態度が、彼にあそこまでさせたのかも知れない。
優しさは時に、過ちを誘発する。
体の関係を持った人が3人いたと言った。
一人はサークルの仲間。
同じ学年、なかなか掴めない男の子だ。
飲みの時、私は先に潰れて自宅に帰っていた。
彼は珍しく飲み過ぎて潰れていて、二次会先のカラオケから唐突に私に電話をかけてきた。
「会いたい」
受話器から零れた掠れ声に、私は許してしまった。
彼がうちに着いた時には泥酔状態で、せめて水を飲ませようと家に上げた。
そこからが、一夜の過ちの始まりだった。
いつもよりも甘えてくる彼を、私は甘やかした。
気がつくと、ベッドの上で彼の為すがままになっていた。
与えられる刺激に、掠れた甘い言葉に、私は陥落した。
最後まででは無いにしても、それは行為と呼べるものだった。
その後、彼とは友人関係に戻ったが、私の気持ちは大きく傾いてしまった。
あれだけ否定的だった「体から始まる恋」に、私は落ちていた。
彼に陥落していた。
体がキッカケとはいえ、久々に生まれた少女のように恋い焦がれる気持ちを、私は大切にしていた。
そんな矢先、3人目の相手。
この人もサークルの友人だった。
同じ1年だが、サークル内の誰よりも年上だった。
それでも、サークルで浮くこともなく、サークルメイトから慕われていた。
最近、その人と話す機会が増えていた。
体が強くない私をよく助けてくれた。
その日も、私の体を案じて、私の家に来ていた。
相手は自分より5歳以上年上の大人だ。私はその人を信頼していた。
腰の痛みに耐えかねていた私に、マッサージの技術を持っている彼がマッサージを施してくれた。
心身ともに弱っていた私のそばで、彼は一緒に眠った。
私を撫でていた手が、違う意思を持っていくのを。あやすようだった唇が耳を甘噛みするのを、私は感じた。
気づいた時には、私の体はいつもとは違うモノに変わっていっていた。
私はこの瞬間を 陥落 と呼んでいる。
自分が逆らえない何者かの中に陥落していくのだ。
それを人は本能とか呼ぶのだろうか。
私は抵抗という言葉を忘れてしまっていた。
ただ、目の前の快楽を追った。
何度も、何度も。
体の至る所に疼痛が走るくらい、溺れていた。
あんなに丁寧な愛撫も、溶けそうなくらい甘い言葉も、浴びたことがなかった。
頭の片隅で、戻れなくなる自分を遠く感じていた。
彼の過去の話を聞いた。
私は、少しでも安らいで欲しいと、癒されて欲しいと感じた。
それが優しさなのか情なのか、
女性は誰でも持ってると私が信じている無償の愛なのか。
もう分からなかった。
でも、これは恋愛じゃない、とも感じていた。
これは、恋愛ではなく、親愛ではないだろうか、と。
二つとも、私の中では大切なのだ。
親愛も恋愛も、どちらも私の中では愛なのだ。
愛がなんなのか分からないにしても。
彼が私の部屋を去った、そのあとの眠りで、私は夢を見た。
私が恋していると感じている、あの彼の夢だった。
二人で並んで歩いていた。
私は幸せだった。
気持ちが通じていると錯覚してしまいそうな程、二人は近かった。
その時、ポロっと自分の気持ちが言葉に出た。
その瞬間、愛しい彼は、笑いながら、
私に別れを告げた。
目覚めて呆然とした。
自分が酷く穢れたものに思えた。
凄く凄く、汚いんだと思った。
シャワーを浴びながら、自分が狂っていきそうになるのを堪えていた。
左腕にある、過去の傷が疼くような気がした。
そこは、年上の彼が昨夜、丹念に口づけを施していた場所だった。
こんな自分を誰が愛してくれるんだろう、と思ってしまう。
こんなに穢れているのに、どうして人を好きになるんだろう。
心が疲弊するのを感じる。
このまま、関係を続けたら、戻れない所にいってしまう気がする。
遊びじゃ済まなくなる、そんな気がする。
一夜の過ちではなく、人生を左右する過ちになるのではないか、と。
私は怯えている。
正常な感覚を持つ私が居なくなる。
狂ってく。
その感覚に恐怖する。