「シーダちゃん、聞いてる?」

「あ・・・え?」

「ほらぁ、聞いてない!どうしたの?今日は何か変よ??」

「ごめんなさい。少し、ボーっとしていたみたいです」

「謝らなくていいのよ。体の具合でも悪いの?」

「いいえ」

「そう・・・・・好きな子でも出来た?」

「・・・・・・」



「あら!シーダちゃん、恋してるのね♪いいわぁ、若い頃を思いだすわね~」

「シーダお姉ちゃんはボクのんだい!!」

「あ・・・いえ、あの」



「いいのよ、思いっきり恋しなさい。絶対神様はシーダちゃんの味方をしてくれるわよ。辛いことがあっても、恋する女の子は強いの。きっと乗り越えられるわ」

「おばさん・・・・」

「おばさんも応援しちゃう♪♪・・・・・そうだ!いいものがあるの!!」





「あ・・・え!!?・・・ダメです!こんな・・・・大事なもの」

「いいのよ~、私が持っていても着ないもの♪ちょっとだけ♪♪」

「でも・・・・」

「いーのいーの!おばさん、息子しかいないから、一度こういうことしてみたかったの」

「・・・・・おばさん」

「見せたい相手はきっと遠くにいるんでしょうけど、せめて、ね」




「・・・・ありがとうございます。・・・・・嬉しい」




「まぁ!何て可愛いの!!ちょっとお父さん!見ておくれよ!!」

「おお~、これ、お前が俺んとこに来た時のか!?」

「やだ、お父さんたら覚えてたのかい♪」

「へへっ、まぁな。・・・・・それにしても似合うなぁ」

「少し腕のところがきついんですけど・・・」

「ははっ!そりゃウチの母ちゃんは剣振ったりしねぇからな!その分、腰のあたりは余裕あるだろ」

「あんた!どういう意味よ?」

「どっちもいいカラダしてるってコトだ!」



「シーダちゃん、今日、それ着てお帰り。フリントさんに見せておあげよ」



(父上に・・・・)





ギュッ・・・





「ありがとうございます。明日、お返ししますから」

「おぅ、フリントの旦那、きっとびっくりするぜぇ!!」

「気をつけて帰るんだよ」

「はい。本当にありがとうございます」









(父上・・・・可愛いって言ってくれたらいいな)





「ただ今戻りました」

「ああ、お帰り。出発の日取りが決まったぞ・・・・・・・・・・・・ん!!?」

「・・・・あ、あの。これ、ジャックのお母さんが貸してくれたんです」

「・・・・・そうか、汚さないようにな。・・・で、日にちだが」


(え?)


「急なんだが、明朝にはここを出られるように準備をしておくように」

「・・・・あ、はい」

「行商の隊列が近くを通るらしい。そこに混ざれば、いくらか安全に次の街まで行けるからな」

「はい・・・」

「俺は挨拶に行って来るから、お前も支度して早く寝なさい」

「・・・わかりました」

「じゃあ、先に寝ていていいぞ」

「・・・はい。気をつけて」





(父上・・・・)

(あれから、もう15年以上経つか)



「父上」

「何だ」

「この村にはいつまで留まりますか」

「そうだな。ノーブルの辺りの緊張が解けたらな。今は治安が悪い」

「北へ向かってはいかがでしょう。ドワーフ王国に入ればいい武器も調達出来ます」

「どうした、やけに急くな」

「・・・そういう訳ではありません」

「そうか?・・・・考えておくよ。もう遅い。いい加減寝なさい」

「はい・・・・」




(カタール・・・)




『フリント、赤子の世話はどうだ』

『まるで雲をつかむ思いです。しかし、毎日が楽しくも思います』

『・・・・そうか。お前もまだ少年のくせに、よくやる』

『恐れ入ります』

『心なしか、顔が柔和になったぞ』

『この子の顔を見ておりますと、とても心が和むのです』

『そうだろう。我も同じだ』




(カタール、見ているか?)


「・・・・・お前の娘、本当に綺麗になっただろう?お前に全然似てないな」





「もっと、年をとっておけば良かったって、本当に思うぞ。気を抜くと、大変なんだ」





(・・・まぁ、そんなことになったら、お前はこの空の向こうから飛んで還ってきそうだがな)





・・・・・・カタンッ


[・・・・父上?今日は本当に酔っ払ってる・・・私に気づかないなんて。昔仲良かったっていう戦友に向かって喋っているのかな]




「なあ、カタール。お前、俺より一体いくつ年上だったんだ?あの子が生れたとき、俺はまだ15にもなっていなかったんだよなぁ」



[やっぱりカタールさん・・・・父上の一番の親友だったっていう、父上に剣を教えた人・・・]



「俺、今年で28になるんだ。あの子は17・・・・今、35才ってことにしているんだが、流石にちょっと無理があるか」


[・・・・?]


「でも、昔よりよく笑うから目尻に皺が出来たんだ。すごいだろう?」




[・・・・・・・・・]




「ふふ、全く、今日はよく飲んだもんだ」


(いくら相手がお星様でも、これ以上は口に出せることじゃないしな・・・・・寝るか)





「また、報告しに来る。次までに、俺が正気を失わないように見張ってるんだな」





ギィ・・・・




(!!!)


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おやすみ、シーダ」



ちゅっ



(!!!!!!)



ばふっ・・・・




(・・・・・)




(・・・・・・・・・・・・・・)




(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「いやぁ、フリントさんが居てくれて本当に良かったよ!命はいっこしかないもんな!!」

「いえいえ、当然のことをしたまでです。お怪我はありませんか」

「かすり傷ひとつないよ。シーダちゃんも強いんだねぇ」

「父には遠く及びませんが」

「十分だろう!さすがフリントさんのお嬢さんだ!!」

「女の子に剣など持たせたくはないのですが、何しろこの時代でしょう」

「そうだね。特にフリントさんのような行商は必要不可欠だろう」

「ええ、全く」


「父上、追っ手が来ます」

「そうか。店主、ここは我々が相手をする。一足先に村に戻ってくれないか」

「そ、そうか。すまん」

「戻ったら、美味い酒を頼みますぞ」

「はっはは!いくらでも飲ませてやるさ!じゃあ、すまんが宜しく頼む」

「行くぞ!シーダ!!」

「はい!!」



「・・・片付いたか」

「はい。・・・父上、剣が折れてしまいました」

「力任せに振るからだ。もっと相手の急所を狙わねば、いずれ困ることになるぞ」

「・・・はい」

「気を落とすな。よく頑張った」

「はい。・・・父上、腕から血が出ています」

「ああ、本当だ。おそらく、流れ矢にでもかすったんだろう」

「今、キュアを」

「ああ、要らん要らん」

「でも」

「無駄に消耗するものじゃないぞ。かすり傷だ。・・・・それより」

「?」

「お前も怪我をしている」

「え?何処に??」

「何だ、わからないのか。・・・・まぁ、自分で自分の襟元は見えんからな」

「・・・本当だ。血が・・・・大丈夫です。痛くありません」

「そうだな。・・・消毒くらいはしておくか」


「!!!??」


ペロ・・・



「・・・・おい、俺相手に顔を赤くするか?」

「・・・・」

「子供のくせに、考えることは一人前だな」

「なっ!!・・・違います!」

「じゃあ何だ」

「それは・・・・」

「ははっ、悪かった。冗談だ。・・・・怒るなよ」

「・・・早く帰りたいです!お腹が空いた!!」

「ははっ、やっぱり色気より食い気だな」

「父上っ、早く帰りたい!!」

「わかった、わかった」




「そしたらよぉ、山賊共がばたばたと倒れてくんだ!あの光景は忘れられねぇ!!」

「さすがじゃのぉ~。しかしフリント殿よ。おぬし、若いのに遊びもせずに感心だの」

「生活がありますからね。それに、私1人ならまだしも、食わせてやらないといけませんし」

「シーダちゃんも、いい子だよなぁ。自慢の娘さんだな」

「そうですね、こんな生活をよく我慢してくれていると思いますよ」

「気立てもいいし、剣の腕も立つし美人だし、こりゃあ、手放せないねぇ」

「・・・普通の女の子らしくさせてやりたいんですがね」

「ふぉっふぉっ!あの子がこの村に来てから、ひっきりなしに若いもんが宿屋を訪ねてくるわい」

「そうですか。人見知りをしない子ですから」

「若いもんも、小さな子供も、みんなシーダを慕っておるよ。村の母親連中にもすこぶる人気があるしの」

「そうなんですか」

「おお、昨日フリントさんが俺たちと山へ出掛けている間、帰りのメシの用意手伝ってくれたらしくてな」

「ええ、その話は聞いてますが」

「とっても器用で、覚えも早いの~ってウチの母ちゃんが褒めちぎってたぜ」

「ああ!俺がもうちょっと若かったらなぁ!!」

「ははは、あいつは大変ですよ。気は強いし喧嘩も強いし」

「父親としては、やっぱり簡単には嫁にはやれんわな」

「・・・まぁ、そうですね」

「く~っ!俺じゃだめかぁ!!」


「ええ!フリントさん、そんな年なの!?」

「ああ。今年で35だ」

「俺と変わらないじゃないか。だいぶ下かと思ったぜ」

「シーダが17になる。そんなものだろう」

「うーん、てっきり30そこそこかと」

「そうしたら、あの子は一体私が幾つの時の子になるんだ」

「そうか・・・・いいなあ、若く見える親父に美人の娘。理想だよな」

「母親がすぐ出て行ってしまったからな。育てるのに一苦労だよ」

「そうなのか?全然問題ないと思うぞ?」

「再婚はしないのか?」



「もう結婚は懲り懲りですよ。私には、あの子さえ居ればいいですから」





(35、か・・・。7年もサバを読んでいるのに、意外と気づかれないものだ。・・・父親面が板についてきたか)





「シーダ」

「おかえりなさ・・・・お酒臭い」

「良い子は寝る時間だぞ」

「父上、私はもう子供じゃないわ」

「子供だよ、俺から見れば」

「当たり前でしょう。父上の子供なんだから」




『フリント』

『ここに居ります』

『カタールの訃報を聞いた』

『・・・残念です。腕の立つ男でした』

『カタールはお前の師でもあったな。その娘を引き取ったと聞いたが』

『はい。母親は早くに病死しており、親族とも関わりを断っていたと聞いておりました故』

『任務に支障が出るぞ』

『・・・出しません。亡き師であり戦友でもあるカタールの形見です』

『確かに聞いたぞ。・・・もはや何も言うまい』

『感謝致します・・・・皇后陛下』