パシュパティナート | 学生団体S.A.L. Official blog

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ネパール、パシュパティナート。ネパール最大のヒンドゥー寺院で、観光客が火葬を見学できるところとして有名な場所である。そこで見学した火葬場の様子について書き残したい。


とても濁った川の沿岸に火葬場はある。数人の男たちが白い布で包まれた遺体を運んでくる。遺族らしき真っ白の服を着た人たちによって赤、黄色の粉、花びら、聖水?らしきもの、いろいろなものをふりかけられたそれが、火葬台へと乗せられる。遺体を焼く人が様々な太さと長さの薪をテキパキと組み、徐々に遺体が隠されてゆく。最後に藁がそっとかぶせられ、見える部分は足の先のみとなった。火がつけられブスブスと白い煙が上がり始めた横で遺族が両手で顔を覆って泣いている。とてもつらそうだ。
驚くことにそのすぐ横で楽しそうな笑い声をあげる子ども達がいる。川を泳ぐ孤児たちだ。燃えた後川に流される遺体の遺品を集めて生活しているのだそう。
子供と遺体。
喜びと悲しみ。
生と死。
様々なものが一つの視界のなかに収まって僕は何が何だか分からなくなってしまった。


日本において死について考える機会を持ったことはなかった。日本において死とは悲しく、忌むべきこととして生活から遠ざけられるものだからだ。インドやネパールでは死は身近なものとして日常に存在していた。死について考えても明確な答えは出なかったしそんなものはないのだろう。だがたとえ観光という形であっても死に触れ、考える機会をもつことはきっと必要なのだ。特に日本人には。

体と服にまとわりつくような煙とにおいを回想して僕はそんなことを思ったのだった。

【文責:渉外局1年 坪井拓斗】