アボリジニ | 学生団体S.A.L. Official blog

学生団体S.A.L. Official blog

慶應義塾大学公認の国際協力団体S.A.L.の公式ブログです。

こんにちは


今日は私が中学のときに見た、おすすめの映画を紹介致します☆


実話に基づいた、フィリップノイス監督のオーストラリア映画、「裸足の1500マイル」(Rabbit-Proof Fence)です。この映画は第56回エディンバラ国際映画祭観客賞を受賞しています。


皆さんは、「オースラリア」を聞くとどのようなイメージを思い浮かびますか?


エメラルドグリーンの輝く海、燃えるような夕焼けを隠すアウトバック、美しいネオンライトで飾られた都市。そして、自国のライフスタイルを楽しむ白人。


ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、今ではオーストラリアの人口の大半を占める白人は、原住民を同化させ、今に至るのです。


その原住民とは、アボリジニです。
アボリジニ(Aborigine)とは、狩猟採集生活を営み、独立した人種を形成する、オーストロイドと呼ばれた人種であります。
彼らは、"Stolen Generation"(盗まれた世代)と呼ばれています。


「裸足の1500マイルは」アボリジニに対する、同化政策に関する映画です。


まず、アボリジニについて、説明します。

西洋人がオーストラリアを発見したとき、250もの言語をもった、700以上もの部族で構成された、アボリジニがいました。
1788に植民地化された後、イギリス人は、スポーツの一環として彼らを殺害するなど、迫害をしてきました。
1928年には、イギリス兵士が、アボリジニを捕獲し、殺害する権利を与えられるに至りました。入植者達によるハンティングや、免疫の低さから、ほとんどが姿をけしてしまいました。
そして、この映画は、1920年に、移住していた白豪主義者によって始められた、徹底的な人種隔離政策によって苦しんだアボリジニを描いています。
その後も、1869年から、約100年にも渡り、アボリジニの子供や混血児などを親から引き離し、白人の家庭や宿舎などで厳しく養育する政策が行われていました。
「アボリジニの存在消滅」によって、彼らのアイデンティティを喪失するのがこの政策の目的でありました。


この映画を取り上げた理由は、彼らの歴史を知って頂く以外に、主に2つあります。

まず第一に、アボリジニのように、私たちが現在認識するほとんどの国や地域で、もともといた原住民をとっぱらって現世界が存在することを再認識して頂きたいのです。日本ではアイヌ、アメリカではネイティブ・アメリカンやエスキモー、どの国や地域でも存在する問題なのです。
また第二に、メディア帝国主義に関して考えて頂きたいからです。現在では、隔離政策を行っている地域は減少していますが、現在でも、メディア帝国主義によって、多くの原住民の言語が抹消されています。国連教育科学文化機関(ユネスコ)によると、約2500もの言語が消えるとされます。それは同時に、それだけの風習や文化も存在しないことになります。私は広報局のものとして、メディアを通して発する際に使われる言語について考えさせられました。



最後に映画についてですが、このストーリーは、ある日、政府の愚かな政策によって、拘束され、寄宿舎に収容された小さな子どもたちが、フェンスだけを頼りに2400km離れた親元に帰ろうとする話です。粗末な環境の中で、白人社会へ強制的に同化されていた当時の様子が描かれています。
この映画の中で出てくる子どもたちは、現地で監督が見つけ出した子どもたちです。
今まで、役者として無縁だった子どもたちによって表現された素朴で繊細な表情に、心が痛みました。



「文明化」の中で、数え切れないほどの生命・言語・文化・風習が奪われてきました。
その中には、幼い子供たちが存在します。
政策のもとには、生きた人間が存在することを知らしめられました。



執拗な追跡者に追いかけられる恐怖、彼女たちを包み込む大自然のスピリチュアルな旋律の美しさ、この作品のリアルな表現と圧倒的な強さに心が打たれます。
三か月間に亘って歩き続けた少女たちの壮大な真実の物語を是非見てみて下さい。



広報局 金津まゆ華