仮説と検証 | 営業は科学だ!  Welcome to the Science of Sales

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色々と複数の案を比較検討することが大事だと述べました。

この「案」というのは言いかえると「仮説」ということになります。

ある時点で明らかになっている状況からいくつかの可能性を見出します。それが「仮説」です。
その仮説の中で新たな事実によって打ち消されるものが出てきて最後にはひとつだけ残ります。それが真実です。

先に述べた神戸の事件でも、現在逮捕されている容疑者が真犯人であるということも現時点では一つの仮説ですし、別の真犯人がいるというのもまた別の仮説です。今までの発表された事実からだけでは、別に真犯人がいるという仮説はまだ完全には打ち消されていないように思います。慎重な捜査を望みます。

科学の世界ではこの仮説と検証は非常に重要です。
中学や高校での理科の実験は、結果が分かっている実験を手順どおりに行うだけで、真の実験とは言えないでしょう。
それまでの情報やデータから仮説をいくつか立てて、それを立証するために実験を計画するのが本来の姿です。
そういう意味では大学の学部生の実験もまだまだ本当の実験とは言えないでしょう。卒業論文などはせいぜい半年でしあげなくてはならないので、仮説を否定するデータが出た場合、新たな仮説を立てて立証するには時間が足りません。
本当に実験によって仮説検証がなされるのは修士以上のケースでしょう。

さて、仮説を立ててそれに反するようなデータが出てしまった場合、時間が足りないとガッカリしてしまい、データねつ造の誘惑に駆られてしまいます。
今年の大きな話題であったSTAP細胞のデータねつ造疑惑もそんな状況から生まれてしまったのではないでしょうか。
自分が立てた仮説に対しての思い込みは禁物です。


私が駆け出しの頃の先輩の営業で似たようなケースがありました。
ある重要なお客様であまり営業成績がよくないのです。
担当営業(私には先輩にあたる)は、その理由を購買担当の部長が我々と別のA社と癒着していると主張していました。上司に対してもいつそう説明をしていました。曰く、「A社の営業とは頻繁ゴルフに行っているようだ」などなど。
その後、私が担当となりました。当然私も最初はA社との癒着があるとの先入観がありました。
しかし、何か月が経つとどうも疑問が生じてきました。それでストレートにその部長に訊ねてみました。「どうしてA社とはゴルフに行かれるのに、われわれとは行かれないのですか?」と。すると、答えは「だって、お宅の前任のSさんからは一度もお誘いがなかったから。」でした。
前任の先輩Sさんは先入観のために素直な付き合いが出来なくなっていたのでした。
A社との癒着というのは仮説に過ぎません。それが立証できていないのに決めつけるのは危険です。

これまでにも何回か書きましたが、自社製品の価格が高いことを売れない理由にあげる営業が多々います。
その可能性はもちろんあります。製造部門などはこれにきちっと対応して欲しいともちろん思います。
ただ、実際に営業がこの仮説を立証したケースは皆無に近いでしょう。単なる思い込みによる言い訳に聞こえます。
私の経験から言えば、実際に価格が高くて売れないのはその内の1~2割程度だと思います。
価格を理由にするならばその仮説を立証する活動が必要ですね。