ブラジルの歴史的大敗には驚きましたが、W杯もあとは3位決定戦と決勝戦だけとなりました。
優勝を目指して32チームが激しい戦いを繰り広げてきたのも終わりに近づきました。
ところで、もう数年前になりますか、民主党の事業仕分けで名言(迷言?)が話題になりました。
「一番じゃなきゃダメなんですか?二番ではいけないですか?」
当時非常に違和感を感じたのを覚えています。
おそらく多くの人が同じ感情をもったのではないでしょうか。特にスポーツ選手などは。
営業の世界ではもし何社かの競合となった場合、ナンバー1しか採用されません。ナンバー2も最下位も、採用されないという点では同じです。二番ではダメなのです。
また、SMAPのヒット曲に「世界に一つだけの花」というのがあり、その歌詞はこんなでした。
「ナンバー1にならなくてもいい。もともと特別なオンリー1」
「ナンバー1」を目指さなくてもいいのでしょうか。
「弱者の戦略(2014-07-04)」の稿でご紹介した雑草生態学者の稲垣栄洋さんの「弱者の戦略」という本に載っていた話をご紹介しましょう。
その本によると、生物の世界ではナンバー1しか生き残れないそうです。
「ガウゼの実験」というのがそれです。二種類のゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼うと最終的には一種類だけが生き残り、もう一種類は駆逐されて絶滅するそうです。
でも自然界では多種多様な生き物が暮らしている。ナンバー1しか生き残れないはずなのに、どのようにして多くの生物が共存しているのでしょうか?
その答えは「棲み分け」だそうです。
競争だけではナンバー1しか生き残れない。競争を避けることが弱者が生き残る道であり、それが「棲み分け」です。
この世に存在している生き物は、それぞれの居場所で「ナンバー1」なのです。
つまり、どんな生物も「ナンバー1」になれる「オンリー1」の場所を持っているのです。
以下引用(p.74)
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オンリー1というのは個性のことではない。その個性を最大限に生かしてナンバー1になることのできる「ポジション」のことなのである。もっともSMAPが歌う「世界に一つだけの花」は、「花屋の軒先に並んだいろんな花」である。人間が世話をしてくれる花屋の花であるなら、ナンバー1でなくとも、オンリー1であればそれでいい。
しかし、自然界であれば、ナンバー1になれる場所を見出さなければ生存することはできない。オンリー1とは、自分が見出した自分のポジションのことなのである。
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生物学ではこの「ナンバー1になれるオンリー1の場所」を「ニッチ」と呼ぶそうです。
ビジネスでもよく「ニッチ戦略」と言いますが、「ニッチ」を単に「すきま」と訳し理解していては本質を見誤ります。