本好きの下剋上 女神の化身3⃣2㊺やったよ、ベンノさん! | 私のみてる世界。

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日々思ったコトやら感じたコトやら。
だらだらと不定期に書いていくつもりです。
まあ主に漫画・アニメについてで、自分用の覚書な最近ですが。

 

参加領地に対して毎年の領主会議で加護の再儀式を行うことを餌に奉納式を恒例行事化してみたらどうでしょう。

二つの領地ずつくらいでも、十年に一度くらいの割合で再挑戦できるなら、皆真剣に神事に取り組むだろう。

 本気で底上げをしたいならば、大人が真剣にやる、子供は自然と釣られてくるものだ。

アウブ・クラッセンブルクから共同研究として貴族院の奉納式を恒例行事案もありましたよね。

年に二回魔力を集められる。

「ローゼマイン、魔力はそのように簡単に

やり取りするものではありません」

マインからは奪うのに?

「王族は手段を選んでいられないくらいの

緊急事態なのですよね? 魔力を集める方法は

色々と考えた方が良いのではありませんか?」

 わたしの発言にジギスヴァルトは目を見開いたまま、完全に固まった。

「少し思い付きを述べてみましたけれど、

どこからどのように魔力を引っ張って来るのか、

奉納式を毎年恒例にするかどうかなどは、

今のわたくしには全く関係のないことですね。

今は奉納式の準備についてのお話を進めてもよろしいですか?」

「……はい、どうぞ」

 あまり頭が動いていなさそうなジギスヴァルトのために、奉納式の準備の手順を手元の紙に記しながら説明をする。

優しい。

「エーレンフェストの協力によって実現した奉納式

であることを王族からしっかり宣伝してくださいませ」

「王族がエーレンフェストの宣伝を行うのですか?」

 どうしてそうなるのか、とジギスヴァルトに当たり前の顔で頷いた。

「わたくしと神官長であるハルトムート、

青色神官の衣装をまとえる護衛騎士の出張費用です。

エーレンフェストとしては何の見返りもなく協力はできません。

王族はこちらの利益を考えてくださる、とおっしゃいましたよね?」

 一度唇を引き結んだジギスヴァルトが、難しい顔で溜息を吐いた後、穏やかに微笑んだ。

そして、各地へ恩を売るための協力を約束してくれる。これで養父様も喜んでくれるに違いない。

 ……養父様、ベンノさん。わたし、やったよ! 前哨戦は完全勝利じゃない?

 

各領地から不満が出ないよう、参加費は今回の受講料とし、自由参加。

不参加者が増えれば準備の労力と釣り合わない、と心配しているジギスヴァルトを見て思う。

この人は本当に王子様だな、と。

不参加領地は目に見えて収穫量や御加護で差が出る。

「周囲の領地が富んでいくのを後悔しながら

指をくわえて見ていれば良いというふうに煽れば、

簡単に食いついてくださると思います」

貴族院の奉納式に出られなかった領地は絶対に参加したがるはず。

「参加する価値があると思わせればよいだけですから、

人を集めるのはどうにでもなりますよ」

ジギスヴァルトは五秒ほど目を閉じてゆっくりと息を吐いた後、ニコリと微笑んだ。かなり動揺させてしまったらしい。もしかしたら、温室育ちの王子様にはちょっと悪辣に聞こえたかもしれない。

 ……まぁ、わたしの師匠はベンノさんとフェルディナンド様だから、ちょっとくらい悪辣でも仕方がないよね!

今回は初心者のためなので、貴族院で参加した王族は不参加で良いと思う。

ジギスヴァルトは目に見えてホッとしたような顔になった。

「わかりました。王族と中央で儀式の準備を行い、

各領地に参加を促すことにします。ただ、回復薬の準備は

エーレンフェストにお願いしてもよろしいですか? 

中央の分は王族が使う方を優先したいのです」

なんでだよ。

「回復薬は各自で準備する物でしょう? 

普段から腰に下げているのですから、

忘れないように注意喚起だけすれば十分ですよ」

貴族院の奉納式では研究に協力しもらうための見返りとして準備した。

「今回は神事について知りたいと望む者に、

王族と協力し、労力と時間を割いてわざわざ教えてあげるのです。

こちらが回復薬を準備する必要など全く感じませんし、

回復薬の準備をするよりは

地下書庫の文献を読み進める方がよほど大事でしょう?」

マインが地下書庫に通えるのは領主会議の間だけ。

回復薬作りより読書時間の方が大事に決まっている。

「回復薬を有料で売ることについては

考慮してみても構いませんけれど……

貴族院で出した物を売りに出せばドレヴァンヒェルが

買い占めてレシピ解析に躍起になりそうですもの」

貴族院で習う物を売っても利益に繋がらない。

 

「……エーレンフェストが急激に富んだわけがわかりました。

そして、領地内の貴族が急激な順位上げに

ついてこられないというのも、よく理解できた気がします」

「相互理解が深まったようで何よりですね。では、

奉納式の準備については終わりましたし、次はわたくしが

王族の養女になるための条件をもう少し詰めましょうか」

「まだあるのですか!?」

 ……え? 前哨戦が終わっただけで、肝心の話し合いは始まってもいませんよね?

実はまだ始まってもなかったのですよ、ジギスヴァルト王子!!

貴族や王族の常識が通じない商人スイッチオンのローゼマインについていけないまま、後半戦に持ち込まれてしまいました!!!

はーーー!でも重い、マインが中央に行くつもりで話してる、?よね?逃げられないのかぁ…………

 

「まだも何も……奉納式はエーレンフェストにとっては

引継ぎと準備のための時間稼ぎができるだけです。

エーレンフェストの利益ではありません」

「……ローゼマインが求めたことにもかかわらず、

利益に繋がらないのですか? 

何故利益に繋がらないことを求めたのでしょう?」

これよく言われるね。

一年の準備期間がどうして利益になると思うのか。

自分に置き換えて考えてみろ。

引き継ぎも移動準備もいらんのかい。

「私は成人で、貴女は未成年です。

いくら執務をしているとはいっても、

責任や負っている執務量に大きな差がありますよ」

にこにこと、王族は未成年であるローゼマインの仕事をアウブのお手伝いだと認識しているらしい。

「ジギスヴァルト王子、わたくしの引継ぎに

時間がかかるのは、わたくしが責任者だからです。

印刷に関しても、神殿に関しても、養父様のお手伝いや

将来に向けた訓練ではなく、わたくしは今現在

事業の責任者として仕事をしているのです」

「ローゼマイン、貴女は未成年ではありませんか。

いくら何でも成年の保護者がいるでしょう?」

うーわー取り上げたの誰だ

「フェルディナンド様はアーレンスバッハに

行ってしまったではありませんか。わたくしの保護者を

王命で取り上げておきながら何をおっしゃるのですか? 

今、神殿にはわたくしの保護者はいません」

神殿長と孤児院長がローゼマインで、神官長は中央までついてくるだろう。

周囲にどんな無茶ぶりをしても引継ぎをして彼はついてくる。それだけは確信を持てる。

 ……別にこんな確信を持ちたくないけど、クラリッサも絶対に一緒だよ!

「一年で全ての神事の祝詞を覚えて、

神事の進行や準備について

把握しておかなければなりません」

古い言葉をまだ覚えられない王族は聖典すら読めないくせに。

「アウブ・エーレンフェストは何を考えているのですか? 

このような幼い子供を本当の責任者にするなど、あり得ないでしょう」

「フェルディナンド様から神官長を引き継いだわたくしの側近が

成人ですから、養父様もフェルディナンド様も問題ないと考えたのでしょう。

わたくしが成人するまでの間に後継を育てればよかったのですもの。

各地から優秀な人材が集まる中央と同じように考えられては困ります」

 エーレンフェストは人材不足と言いましたよね? 

言葉から受ける認識に大きな違いがあることを今更ながら実感しているようだ。