この記事は、妄想恋愛小説(BL)です。苦手な方はUターンを♪
帝王様とチビ悪魔 2
ジュンは、恐れという感覚そのものを、まだまったく知らなかった。
(いたずらをして、父親におしりを打たれる痛さなら知っている。)
自分を睨むショウに向かって、チビ悪魔は何か喚いている。
「なんだ、何が言いたい。」
ショウは空気玉の中に左手を突っ込むと、チビ悪魔の背中に生えた、
小さなコウモリ程の羽の根元をきゅっと摘まみ上げた。
チビ悪魔は、『あ』と言う顔をして、急に大人しくなった。
悪魔の羽の根元は、弱点の一つ。
大人の悪魔でも、ここを触られると体から力が抜けたり、
逆に強い快感を覚えて、どうしようもなくなったり、
とても敏感な場所ではあった。
だが、大人の悪魔は、自分の背後の弱点を、簡単に触られたりする程、
間抜けではないので、ここはもっぱら、大人がチビ悪魔を躾ける時に、
ギュッと押さえる場所として、認識されている。
いわゆる、親猫が、子猫の首根っこを咥えるようなものだ。
きゅうと、大人しくなったのを見計らって、
ショウが右手から発していた力を緩めると、空気の塊は消滅した。
ショウは、目の前にチビ悪魔掲げ、じっくりと眺めた。
背丈から行くと、4~5歳というところか。
肌は透き通るように色白で、小さな顔に、黒目がちな、力強い瞳。
良く見れば、紫がかっているようにも見える。
頬も唇も紅色で、思わず『本当に悪魔の子か?』と疑いたくなった。
余りに白く可愛い見た目に、ショウは一瞬、
『この子は天使では?』 と、思ったのだ。
だけど、よくよく、観察して見れば、悪魔の特徴しかない。
背中にはまだ小さいけど黒いコウモリのような羽があり、
尾てい骨付近には、悪魔らしい(まだ小さいが)しっぽが生えていた。
頭には、柔らかなウェーブの黒髪に隠れて、
小さな2本の角も生えている。
もう一度前に返して見れば、脚の付け根には可愛らしいモノがちょこんとあり、
それが何よりの証拠だった。
足の付け根にあるもの、それは、天使にはないのだ。
天使も悪魔も雌雄一体だが、天使に生殖器官はない。
交わることなく、子を成すことが出来る、それが天使・・・神の世界だ。
逆に、悪魔族は交わりを好む。
元来、相手を征服し、平伏させるのが好きなのだ。
だから、生殖に男女の決まりはないが、子を成すには、それは必要だった。
うむ。悪魔の子供だな。
「お前、名前は?」
「・・・・。」
「なんだ、しゃべれないのか?」
「・・・・。」
口をパクパクと動かしてはいるが、声は聞こえない。
ショウは、先ほどこの子の命乞いをした、バトラーのことを思い出した。
「ニノ、この子はなんだ?」
廊下で跪いていたニノは、びくっと体を震わせて、
床におでこを擦りつけて『恐れながら』と、口を開いた。
「その子は、私の姉の子でございます。
当屋敷の人出が足りなかったので、行儀見習いを兼ねた下働きとして呼び寄せ、
先ほど屋敷に到着したところでございました。」
「ああ、そう言えば、そんなことを言っていたな。到着は今日だったのか。」
「はっ。帝王様がお目覚めになられましたら、ご挨拶をさせるため、
一先ず身綺麗にさせようと、侍女と3人で入浴させまして・・・。」
「・・・で、この有様か?お前らしくもない。」
「はいっ。申し訳ありません(汗)」
ニノは床につけた頭を、これ以上ない位、更に下げた。
(すでに床についてるので、それ以上は下げられない、あくまでニノの体感の話。)
「この子はしゃべれないのか?」
「いえ。羽の付け根の弱点部分が、
その子にとっては人一倍、過敏に出来ているようで、
そこを抑えると、発声が上手く出来なくなるのです。」
「特異体質か・・・。」
「そのようで・・・生まれつきでございました。」
「ふむ。」
ショウはその子をまた見つめた。
拾われた子猫のように、自分を見つめ返すそのチビ悪魔の鼻先に、
指先を突き付けて、言葉続けた。
「今から、この手を離す。だが、絶対に走るなよ?そのままそこに立つんだ。
いいな?言いつけに背いたら、お仕置きだ。分かったか?」
チビ悪魔は、ジッとショウのことを見つめ返すと、コクリと頷いた。
ショウは部屋の入り口で跪いているバトラーの横に、そっとチビ悪魔を下ろすと、
羽を掴んでいた左手を離した。
つづく
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ファンタジーなので、好き勝手なことを書いています(笑)
魔界ものなど、ほとんど読んだことがないので、
本当に私の思う魔界、悪魔、天界、天使を書いて行きます。
あくまでもサラの中の、妄想世界です(笑)
(と言う言い訳(;^ω^))
よろしくお付き合いくださいませ~♪