誰かに言われる以前に、僕はすでに何度か自分の生い立ちを恨んでいる。

物心ついた時には兄弟を恨んだ。
男兄弟は皆自分より長身で、上から見下ろされる感覚が苦手だった。スポーツもできて、友達も多かった兄弟に比べて僕は何をしてもソコソコで、唯一上が出来なかった勉強も、最終的には弟に越された気がする。被害妄想この上ないが。兄弟に対してコンプレックスを抱いたまま、逃げ出すように大阪に飛んだら、少しはマシになった。皆が別々の土地で暮らしているそのうちに、赤の他人みたいに思えてきてしまって、関西で生きていこうと思った。

音楽を始めた時は相方を恨んだ。
自分の作品を作るとき、誰かは「詩が降りる」なんて言葉を使うけど、絶対的に自分の中にないものは生まれない。人間の出生だってインプットとアウトプットの流れの中の産物だもの。やつは大学をすぐにやめて、仲のいい元相方とルームシェアをした末に大学復帰してすぐにまた辞めていった。就職も転々として今は何をしているんだろう。ある日は大学にビール片手にやってきたり、酔っ払って歩道で歌い出したり、立ちションしたあとに手を洗わなかったり。常識違いだ。逸脱だ。

実家の親友と呼べる友も恨んでいる。
高校での親不孝、短大は一年でやめて、安月給の撮影会社が楽しいとかほざく。めったの休みも風俗キャバクラガールズバー。そのくせ僕の結婚式ではボロボロ泣いてやがるから気が狂っている。まともな女を持たないくせに、不特定多数を捕まえてくるのがうまかったっけ。本当に尊敬している。

中高大とストレートで卒業、真っ先に就職。早くに結婚して、休みは家事や買い出しをして過ごす人生。羨む人はいるし、その生活に嫌気をさしているわけでもない。間違いなくそう。でも自分が何かを生み出すためには人と違った経験が必要で、ごく一般的な生活の中では得られないことを得ないと作品は作れない。自分が反面教師だ。次の人生は転生に転生を重ねた僕に任せるとして、今の人生をどうするかは僕次第だ。

違う人生を生きてる。
気付くのはベッドの上じゃないね。