冬は寒いので、私はいつも帰宅してすぐに雨戸を閉める。

今は、その窓がスムーズに開くことにわずかな悲しさがにじむ。

太陽の光が良く入る腰窓には、今までぽっちゃんの日向ぼっこ用の台を取りつけていた。

台のおかげで窓が三分の一しか開かなくて、雨戸を閉めるのに少しばかり不自由していた。

その台も、今はもうない。

日向ぼっこ用の台を取り付けて間もない頃、ぽっちゃんが台から降りる際に壁に爪を立てていたらしく、賃貸の壁がボロボロになり始めたことに気づいた。

慌てて私は、衣装ケースを階段状に窓際に設置した。

衣装ケースが功を奏して、ぽっちゃんはその衣装ケースを使って日向ぼっこ台に乗り降りをしてくれていた。

その衣装ケースも、元の押し入れに戻って、窓の周りは随分すっきりしている。

ぽっちゃんとともに、いろんなものが無くなって、少しばかり、家の中が様変わりした。

今日、お骨が帰ってきた。

お骨が帰ってきたらお花を買いに行こうと決めていた。

幸いにも花屋が歩いて１分もかからないところにある。

ぽっちゃんが、一輪だけ花を活けてほしいと言っていたから、一輪だけ。

菊の花はあまりにもそれっぽいので、避けた。

白い花を探すことが、こんなに悲しくなるとは思わなかった。

華やかなラナンキュラスもあったけど、かわいい名も知らぬ花にした。

可愛いほうがぽっちゃんらしいと思った。

泣きそうになりながらお会計した。

長寿のお祝いに、お刺身が欲しいとぽっちゃんは言っていた。

お刺身は、次の休みまで待ってもらう。

にわか作りの小さな仏壇（？）。

お骨の前にはペースト状のご飯とお水とお花。

いなくなった生活