・自分の言葉で話す
・幹部の表情に注意する
説明者は「資料を説明する」ことに集中力を使ってしまう傾向があります。
幹部説明の目的は「幹部を説得する」ことであり、文字通りの「資料を説明する」ことではないことを忘れないでください。
さて、上記の2点は相互に依存性があります。それぞれについての説明と実践方法について述べていきましょう。
1.自分の言葉で話す
幹部に対する説明を聞いていると、自信ありげに話している人と、不安で声が消え入りそうな人がいます。
自信ありそうな人は声に張りがあります。また時折、幹部に目線を合わせています。こうした人は検討漏れを指摘されても対応方針をしっかりと回答できるので、安心して話を聞いていることができます。
説明したいことを自分で考えた人は自分の思いを持っているので、説明資料がなくても聞き手に熱い思いを伝えることができます。
結婚披露宴のスピーチを思い浮かべてください。メモを見ながら無感情にスピーチを読み上げるのと、場の様子を見ながら時にはジョークを交えながら自分の言葉で堂々とお祝いの言葉を伝えるのとでは、どちらが場を盛り上げてくれるかは明らかでしょう。
たとえ練習を重ねた成果であったとしても、自分の思考がベースになっていれば自分で消化できています。自分で消化できていることは、自分の言葉で話すことができます。
心配性な人は資料に多くの情報を書き込もうとします。その結果、資料は文字だらけとなります。本人の持てる情報はすべて書き込んでありますから、説明時には文字をそのまま朗読するしかなくなります。
資料を使うということは、聞き手と話し手で同じ対象をベースに議論していることを確認する手段にすぎません。まちがっても資料が話し手の台本になってはいけません。
文字数が多くても有益な情報はごくわずかであることがほとんどです。あとは免責条項のように万が一のために書かれた文字がほとんどでしょう。これらは書いた本人には意味があっても、聞く側からすれば視界の邪魔になるだけです。幹部は些末なことは社員に任せています。気になることがあれば聞いてきます。
私の経験上、資料を自分の言葉で説明するには2通りの方法があります。
幹部の説明資料はエッセンスのみを記載します。
しかし、当初の資料作成時には、どうしても些末なことを書いたり全体の構成がアンバランスだったりします。これはこれで一回資料としてまとめます。
その上で新たにエッセンス版を作成することは比較的容易です。時間に余裕のある中堅幹部は、担当者が作成した詳細資料を第三者目線で自らエッセンス版に焼き直すことも良いでしょう。
中堅幹部であれば自ら資料を作成することはないでしょう。それであっても、実務精通者と質疑を繰り返すことで説明内容を咀嚼することができます。
これにより資料に書かれた内容を読むのではなく、自分の理解による説明を組み立てることが可能となります。
2.幹部の表情に注意する
説明を始めると資料や画面に目線が釘付けになってしまう人がほとんどです。自分の目の前にいる幹部の存在を忘れてしまったかのようです。
こうした人は資料や画面を見ないと話せないのです。なぜならそこに読むことが書いてあるからです。
資料説明時は幹部を向いて説明するか、幹部の表情を時々確認しながら進めていかなくてはなりません。途中で質問が出ないからと言って満足して聞いてくれているとは限りません。
幹部が集中して聞いてくれているのかは顔を見れば一発で分かります。内容に満足していなければ表情や目線に表れます。説明終了後に質問やコメントの嵐が吹き荒れるのを覚悟しなければなりません。
では幹部の目線がどこを向いているかに応じて対処法を考えていきましょう。
1)こちらをじっと見ている
(状況)
あなたは試されています。何かに気づいてほしいサインです。幹部は説明のどこかに不満を持っています。説明内容に異議があるか、説明態度に不満があるのでしょう。
(対処)
幹部は説明に不満を持っています。時間をかけて懇切丁寧に説明をしていても改善の見込みはないので、早めに切り上げましょう。その時点で幹部から指示が出るはずです。
2)画面を見ている
最近は紙を使わずに、資料をモニターに映して説明することが多くなりました。
(状況)
現時点では、説明内容について好意的と判断して良いでしょう。
(対処)
説明を聞いてもらってはいますが、画面を追っかけているということはあまり頭脳が動いていない証拠です。早めのゴー・サインがもらえそうです。しかし時には次項の「宙を見ている」状態を作り出すことも参謀としては大事です。
3)宙を見ている
(状況)
説明を聞きながら自分で思考しているか、自分の興味外と判断しているかのいずれかです。
(対処)
最後まで話し通すか、きりの良いところで「ご質問はありますか?」と聞いてみましょう。
私が部下の説明を聞く時も同じことをしています。画面を見ながら聞くことを基本としています。それは画面に書かれていることを先読みしながら、その内容について思考するためです。説明者の説明はBGM程度にしか聞いていません。しかし時折、部下の顔を見ます。そして部下の目線がどこを向いているのかを見ます。画面の文字を一生懸命追っかけているのであれば、説明を聞く必要なしと判断します。
最後に。
資料の各ページには、大きなフォントでページ番号をつけましょう。できれば、(1/5)のように全体の枚数と現在のページが分かるように表記するのが望ましいです。幹部は途中で質問したいのを我慢して最後まで待っています。説明終了後に質問したいスライドをすぐに参照できるようにしておいてください。
